なでしこJ、打倒イングランドに3つの鍵
「もちろんイングランド戦も同じメンバーで臨むこと。澤穂希がなぜベンチなのか、と思うファンの方もいるかもしれないが、今大会中にボランチとして成長した宇津木が決勝トーナメントに入って文句なしのパフォーマンスを演じていることで、36歳の澤に必要以上の負荷をかけなくてもいい状況が生まれた。グループリーグでは宇津木を左サイドバックで起用するなど、試行錯誤を重ねてきた佐々木監督だが、ようやくベストのバランスを見つけた。 利き足の左足から放たれる正確なロングパスを武器としてきた宇津木だが、相手のパスを鋭い出足でインターセプトするなど、ゲームを読む力に成長の跡を感じさせている。1対1の状況になっても、海外の選手相手にひけを取らないフィジカルの強さもある。強さ、速さ、上手さを兼ね備えた選手が多いフランスリーグで5年もプレーしてきたことで、外国人選手の強さと独特の間合いに慣れていることも大きい。 ダブルボランチを組む阪口夢穂との連携もいい。お互いにサポートしながら素早くボールを動かし、フリーの味方を上手く使うことで相手にアプローチさせるタイミングを与えていない。相手にしてみれば必死に追いかけてもボールを奪えず、日本にチャンスを作り続けられ、やがては体力と気力を奪われる。オーストラリアを消耗させたボール回しは、同様に大柄な選手が多いイングランドにも有効な戦法となる」 【ポイント 2 大野のチェイシングに合わせて連動する】 パスの出し手にプレッシャーをかけて、正確なボールを蹴らせないことがロングボール攻撃を封じるセオリーとなる。そして、プレスの「一の矢」を任せられるうってつけの選手が大野となる。 グループリーグから良好なコンディションを維持してきた大野は、決勝トーナメントに入って右MFから2トップの一角に回ったことで、武器である豊富な運動量と俊敏性を相手の最終ラインに対するプレスで生かせるようになった。鈴木氏も「大野の功績は非常に大きい」とこう続ける。 「ときにはバックパスを受けた相手GKまで大野が追いかけ回すことで、大儀見優季、宮間あや、川澄、宇津木、阪口が次のターゲットを定めやすくなり、連動してボールを奪える好循環が生まれている。ロングボールをすべて封じることは難しいが、プレッシャーをかければ必ずミスが生じる。 テイラーに合わなかったボールを拾って攻撃を組み立てるにしても、相手の苦し紛れのパスをインターセプトしてショートカウンターを仕掛けるにしても、大野の献身的な動きが果たす役割は重要になる」