壮絶な奪い合い…世界が恋する日本の中古品
店のシャッターが開くと同時に客が走り出し、お目当ての品へ一目散。我先にと奪い合う。 コスプレ姿の男性は玩具を掲げ、「ゲキレンジャー、ゲキトージャ。これが一番欲しいやつ」と興奮気味に話す。手にしたのは、20年前の特撮モノの変身グッズ(約2万3000円)。 タイでは今、日本の昭和レトロブームが起きており、昔のアニメやドラマに憧れを持つ若者も。 中古の工具も「日本で使われていたものなら…」と大人気。ある男性は、工具の汚れやサビをきれいに落として転売すると話す。 この日だけで、店の売り上げは約170万円以上。浜屋で少々高く仕入れても、十二分に元が取れる計算だ。 こうした爆買いの背景にあるのが、日本の商品に対しての割安感。タイの通貨バーツは、円安もあって急上昇している。
次に取材班が向かったのは、バンコクから車で1時間のバンポン郡。大通り沿いにある店には、日本語で「リサイクルショップ」と書かれたのぼりが立っている。2週間後にオープン予定の店には浜屋で400万円以上使った女性の姿が。買い付け担当としてオークションに参加していたのだ。 オーナーのチャンヂラさんによると、この店の特徴は、商品を一つ一つ整然と陳列していること。日本のリサイクルショップを見習って、新品同様にきれいにしている。 家具専門の2店舗目も準備しているチャンヂラさんは、「できればジャパンタウンをつくりたい。ここを全部、日本のリサイクル商品の店にしたい」と笑顔で話す。
東京ドームの広さに全20店舗 “ニッポン中古店”驚きの戦略!
バンコク郊外にあるショッピングモール「マイアミ・ベイサイド」は、東京ドームとほぼ同じ広さで、家具や洋服などを扱う20店舗が入っている。売っている商品は、全て日本の中古品という変わったショッピングモールだ。
全ての店を経営するのが、「ギークスリテイリング」の矢内祥一郎さん(47)。新入荷の日、外では大勢の人が待っていた。 開店すると、例によってお客がなだれ込んでくる。やはりここも早い者勝ちだ。 矢内さんは争奪戦になる理由を、「ユーズド・イン・ジャパン」への高い信頼と「ニッポンブーム」にあると分析する。 元々親日国のタイからは、年間130万人(2019年度)もの観光客が日本を訪れる。リピーターも多く、日本の良さを知る人が多いのだ。 コロナ禍でタイの人たちが日本に行けなくなった際は、国内に日本の街を再現した施設がオープンし、にぎわいを見せた。こうした施設には、日本の中古品がたくさん使われていたのだ。 「全くのド素人で始めてしまった」と笑う矢内さんだが、このショッピングモール以外にも、タイ国内の5カ所でお店を展開。矢内さんはどうやって成功を収めたのか、その秘策とは……。