60年代セレブが競って買ったジャガー「Eタイプ」に試乗! ポップカルチャーのアイコンは「よくできたスポーツカー」でした【旧車ソムリエ】
カッコだけではない、本質からして優れたスーパースポーツ
3.8L時代のEタイプには、XK120~150ゆずりの英国MOSS社製4速トランスミッションが組み合わされる。発進後にノンシンクロ+ストレートカットの1速で引っ張ると、「フェーンッ」という擬音で表記したくなるような、独特のギヤノイズが聴こえてくる。 でもそのあと2速、3速とシフトアップしていくとギヤノイズは霧消し、以前乗ったことのある4.2L版のSr.1よりも明らかにスムーズなエンジンフィールが感じられるようになってくる。3.8LのXKユニットは「ヴォォォーンッ!」という張りのあるバリトンを朗々と聴かせながら、心地よいシルキーな吹け上がりで、トルクフルにスピードを上げていくのだ。 そして、カーブの続く道に差しかかると、Eタイプが単なるGTではないことも解ってくる。早め早めのステアリング操作を心がけると、意外なくらいクイックにノーズが切り込んでくれる。もちろん、空力効率のためトレッドが狭い独特のプロポーションゆえに、横方向のグリップは充分とはいえないながらも、コーナー手前で充分に減速し、スロットルコントロールも丁寧に行うことで、スポーツカーらしいコーナーワークが楽しめる。 さらに特筆すべきは、乗り心地の良さである。路面の荒れた一般道でも不快な突き上げなどは最小限で、ジャガーの代名詞「ネコ脚」って、きっとこんなものだったんだろうな……と実感することになったのだ。 見た目も走りも、ヒロイックなカッコよさが横溢しているジャガーEタイプは、1960年代ポップカルチャーのアイコンともなった。それは、スタイリングだけには留まらない「よくできたスポーツカー」あるいは「魅力的な自動車」であることも大きな要因といわねばなるまい。 今回はそんな当たり前のことを、あらためて再確認するテストドライブとなったのである。
武田公実