60年代セレブが競って買ったジャガー「Eタイプ」に試乗! ポップカルチャーのアイコンは「よくできたスポーツカー」でした【旧車ソムリエ】
名だたるセレブたちが競って購入するほどの爆発的人気に
かくして誕生したEタイプは、Dタイプからの継続性を強調した車名が与えられた一方、当時から世界最大のスポーツカー市場であったアメリカでは、すでに高い人気を博していたXK150の後継車であることもアピールすべく「XK-E」と呼ばれた。 そして、かのエンツォ・フェラーリをして「世界一美しい」といわしめたとされるスタイルに高度な設計、同時代のアストンマーティン「DB4」の約半分に相当するリーズナブルな価格なども相まって、チャールトン・ヘストンにディーン・マーティン、そしてスティーブ・マックイーンなどのセレブリティたちが先を争ってXK-Eの注文書にサインするほどの爆発的人気を博すことになったのである。 そしてEタイプは、その北米市場のリクエストに合わせるかたちで、次第にその仕様を変えていくことになるのだが、そのあたりのお話はまた別の機会、たとえばV12エンジンを搭載した「Eタイプ シリーズ3」に、いつか試乗するときにでも譲ることにしよう。
この時期の英国製スポーツカーの世界観を明快かつ魅力的に示す1台
今回ご登場いただいた真紅のEタイプは、1964年式。つまり3.8L時代のシリーズ1最終型で、ボディタイプはオープンモデルの「OTS(Open Two Seater)」である。 この時期のシリーズ1は「フラットフロア」と呼ばれる最初期型よりもダッシュボード下の床を一段低めたことで、足もとのスペースが若干広められているのが特徴。またEタイプではこの個体を含めて左ハンドル仕様が多いのは、当時の英国政府の輸出重視政策にのっとり、その大部分がアメリカなどの右側通行国に輸出させるためにつくられたからである。 だからこのEタイプOTSは新車さながら、あるいはそれ以上に美しいかに映るコンディションも相まって、この時代の英国製スポーツカーがもたらした世界観を、ある意味もっとも明快かつ魅力的に示してくれる1台ともいえるだろう。 高くて深いサイドシルをまたいでキャビンに収まってみると、最初に意識するのはスパルタンな掛け心地のシート。4.2L時代になると、四角いシートバックに厚めのクッションを組み合わせた、やや平板な革張りシートに変更されるのだが、この時代は美しい「おむすび」型シートバック形状で、クッションが薄いバケットタイプが選ばれていた。 そしてイグニッションキーを回して、チョークレバーを下方にスライドする。整備が行き届いているせいか、スターターボタンを押すと名機XK型直列6気筒DOHC・3781ccエンジンは即座に始動し、早々にチョークを戻しても安定したアイドリングを続ける。