ロシア語対ペルシャ語・アサド政権下で繰り広げられた周辺国の言語による覇権争い
これらの地域の住民はほとんどがイスラム教スンニ派だ。イランのシーア派思想教育に警戒していたが、結局受け入れてシーア派に転じた人もいる。スンニ派やシーア派への宗派変更は別にイスラム教をやめるわけではないので、罪にはならない。宗派変更の儀式があるわけでもない。 シリアにロシアが入って以降、イランも「ロシアに負けまい」と、シリア人のペルシャ語教師養成をシリア国内だけでなくイランでも行った。養成所を卒業してペルシャ語教師になった人には、給料の他に食料の配給なども行った。
ロシアもそれに対抗して、デルゾールの教師たちに2024年度には3トンの支援物資を届け、300人ほどの教師がその恩恵にあずかったという。 ■あまりにも安すぎる公務員給料 シリアの公務員は、給料だけでは暮らしていけない。公務員の立場を利用して賄賂や汚職、副業その他あらゆる方法で得た収入で暮らすしかない。 アサド政権下のシリアで2023年に昇給が発表された。副大統領や首相の月給が100万シリア・リラ(正規の為替レートで約100ドル)。副首相や大臣の月給が90万シリア・リラ。知事が69万シリア・リラだった。
シリア・リラの価値は対ドルで下落する一方で、食品価格は上がり続けた。 シリア人兵士の月給は2023年に1万リラから10万リラに引き上げられたが、ドル換算するとわずか7ドル。レバノン停戦と同時に始まったシリア反政府組織とろくに戦わずに、持ち場を放棄したのは、たったの7ドルのために命を犠牲にするのがばかばかしいという理由もあったからだ。 イランがイラン系の学校に通う生徒に支給する奨学金は、3万シリア・リラで、ドル換算にして3ドル未満だ。それっぽっちでも生活の足しに欲しがって、イラン系の学校に通い、ペルシャ語を学んだのだった。
アサド元大統領はシリアを逃亡する3日前となる12月5日、シリア北部情勢の緊迫化にともない危険度が上がったことを考慮してシリア軍人の給料を50%引き上げると発表した。 だが、ロシアに逃げたアサドはモスクワの超高級高層ビルに4000万ドル相当ともいわれる豪華マンションを20戸も所有していると伝えられる。 シリア中央銀行の発表によると、アサドは重さにして2トン近くもの100ドル紙幣や500ユーロ紙幣を飛行機でロシアに運び出したというのだから、言葉がない。