なぜ、最低賃金ニュースは“経営者の悲鳴”ばかり? 労働者の声が消えるオトナの事情
ベトナムやタイに追い抜かれる日も近いか
「最低賃金を引き上げるだけでは、経済は良くならない」と文句を言っている人もいるが、諸外国と同様に日本も最低賃金を引き上げているのならまだしも、日本の場合はそもそも「最低賃金引き上げ=邪道」みたいな強迫観念があるので、十分にやってきたとは言い難い。 2018年に最低賃金を大きく引き上げた韓国を見て、多くの日本人は「大失敗だ」とさげすんだ。もちろん、かの国の経済にはさまざまな問題があるが、日本よりも平均年収が高く、最近では1人当たりGDPまで抜かれてしまった。 2024年7月、ベトナム政府は最低賃金を平均6%引き上げている。 タイも2025年1月1日、1日の最低賃金を330~370バーツ(日本円で約1508~1690円)から400バーツ(同約1828円)に引き上げた。2024年も観光業界などを対象に2回にわたって最低賃金を引き上げている。「零細企業の倒産」よりも「労働者(消費者)の生活」を重視するのが、世界の経済政策の常識なのだ。 ベトナムやタイは経済成長著しく、いずれ日本は追い抜かされるといわれている。恐らくそのときがやってきても、日本のマスコミはまだ「最低賃金が84円上がって経営者が悲鳴!」とかやっているのではないか。 そうなると、ベトナムやタイは現在のハワイのような位置付けになる。そう遠くない未来、「え? この正月休みベトナム行ったの? ランチに5000円もかかるようなところによく行けたね」なんて会話が当たり前になる時代が来るかもしれない。 (窪田順生)
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