生産量3年ぶり増 奄美黒糖焼酎 23酒造年度需給状況 コロナ禍収束で生産再開
鹿児島県酒造組合(濵田雄一郎会長)は5日、2023酒造年度(23年7月~24年6月)の県産本格焼酎の需給状況を発表した。奄美黒糖焼酎の製成数量(生産量、25度換算)は前年度比535キロリットル(9・3%)増の6297キロリットルとなり、3年ぶりに増加。新型コロナウイルス禍の収束に伴い、各メーカーが控えていた生産を再開したことが要因の一つとみられている。課税移出数量(出荷量、実数)は6668キロリットル。前年度(6826キロリットル)とほぼ横ばいだが、6年連続で減少している。 県全体の生産量は11万9377キロリットル(前年度比8・9%増)、出荷量は8万6496キロリットル(同3・7%減)だった。芋焼酎の原料確保に影響を与えていたサツマイモ基腐(もとぐされ)病の被害が減少したことなどから、県全体の生産量は回復しつつあるものの、少子高齢化やライフスタイルの変化、消費者嗜好(しこう)の多様化などを背景に焼酎の消費は減少傾向にある。九州4県(鹿児島、熊本、大分、宮崎)では、熊本県のみ出荷量が前年度を上回った。 好調だった鹿児島県産本格焼酎の海外への出荷量は前年度比38・7%減の429・008キロリットルとなり、3年ぶりに減少に転じた。昨年8月に始まった東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を巡り、最大の輸出先だった中国が日本産水産物の輸入を全面的に停止し、現地の日本料理店などで焼酎の消費に影響が出たことが要因。中国への焼酎出荷量は前年度に比べて56・8%減と大きく落ち込んだ。 黒糖焼酎の生産量はコロナ禍前の18年度比で105・1%、出荷量は92・7%となっている。同組合は「黒糖焼酎の出荷量は近年、6~7千キロリットルで横ばいの状況。県外への出荷が積極的に行われている一方、地元では減っている」と分析。業界全体として生産コスト上昇への対応が課題であることから、若者世代を意識した需要拡大のための新商品開発やソーダ割りといった新しい焼酎の飲み方の提案などに力を入れていく方針を示した。