「財布落としていませんか」…家に届けた青年はロッテドラ5の剛腕だった 「免許証がないと困るから」 廣池投手(東海大九州)、バイクで熊本市の女性宅に
熊本市北区龍田の会社員、石合望さん(41)が落とした財布を6月中旬、ある野球青年が石合さん宅に届けた。その青年は10月24日のプロ野球ドラフト会議でロッテに5位指名された東海大九州の投手、廣池康志郎さん(22)=熊本市、宮崎・都城農高出=だった。思わぬ縁が生まれ、石合さんは「とてもすてきな人でファンになった。家族みんなで応援します」とほほ笑む。 熊本のスポーツ
石合さんが仕事や用事を済ませ、自宅で一息付いていた午後9時ごろにインターホンが鳴った。「財布を落としていませんか」。モニターには、石合さんの財布を手にした笑顔の青年が映っていた。 玄関先で財布を受け取った石合さんと夫の孝行さん(42)は、気さくな廣池さんに好感を持ち、出身地である宮崎県や野球に打ち込んでいることを聞いた。話が弾む間、そばにいた次男(5)も「(廣池さんは)優しかった」と話す。アパレル会社に勤める孝行さんはお返しのつもりで、家にあったTシャツを手渡して見送った。 まもなく、廣池さんを取り上げた記事で最速153キロを誇るプロ注目の投手だと知った。以来、廣池さんの動向は石合さん一家の関心事になった。 一方、廣池さんは6月中旬の午後4時ごろ、練習試合の帰りに中央区黒髪辺りの道路で財布を拾った。「警察に届け出ることも考えたが、直接届けた方が早い」と思い、入っていた免許証の住所を頼りにバイクで自宅に届けた。1度目は不在で、2度目の訪問で手渡した。
ドラフト会議当日。石合さんは仕事の帰りに、友人からの連絡で朗報を知った。帰宅後は家族みんなで指名を喜んだ。廣池さんに交流サイト(SNS)で感謝とお祝いの言葉を送ると、丁寧な返事も届いた。石合さんは、2人の息子たちに「相手を思ってしたことは、必ず相手に伝わる」と話しているという。 廣池さんは23日、ロッテと入団の契約を結んだ。「免許証がないと車を運転できず、困るだろうという一心で届けた。石合さんをはじめ、多くの人に応援してもらえるように、早く1軍で活躍したい」と誓った。(石井颯悟、水田智)