阪神育成D4位・川崎俊哲、名前を売って職人の父が製造した輪島塗を売る
阪神の育成ドラフト4位・川崎俊哲内野手(23)=日本海L石川=が11日、鳴尾浜での練習後、父が石川・輪島市で輪島塗の製造、販売を行っていることを明かした。元日の能登半島地震で甚大な被害を受けた地場産業の再生に一役買うため、プロの世界で活躍して自身とともに輪島塗の知名度を高めることを誓った。さらに甲子園球場内で実家製造の漆器を販売する夢も思い描いた。 震災からの復興を目指す故郷の地場産業、輪島塗を全国の人にもっともっと知ってもらいたい。川崎が寒風すさぶ鳴尾浜で熱い思いを語った。 「ウチの商品が(自分の活躍で)売れてくれたら、うれしいなと思ってます」 実家は石川・輪島市で輪島塗の製造・販売を行う「川崎漆器店」。父・哲史(さとし)さん(57)が店主だ。きらびやかな蒔絵(まきえ)が描かれた茶碗(ちゃわん)や湯飲み、三段重。ウン十万円の装飾品もある。重要無形文化財に指定される漆器を、職人が一つ一つ手作業でつくる姿を見て育った。「(家の中に)仕事場があって、漆の匂いがしていた」。川崎は小さいころから輪島塗の箸を使用。「(値段は)高いと思うが、手触りがいいですね。(来年の)入寮の時、持参しようと思っている」。 伝統が息づく輪島に不測の事態が起こったのは、今年の元日だ。最大震度7の揺れを観測した能登半島地震。市内では輪島塗の工房が10件以上倒壊するなど、甚大な被害を受けた。「ウチは新築2年目で(地震の)被害はほとんどなかったが、周りはすごかった。お父さんもショック受けていた」と声を落とす。 そんな中、川崎が阪神から育成ドラフト4位で指名されたニュースは、苦難を乗り越えようとしている輪島の人々にとって希望の光。哲史さんは「地元の方がすごく喜んでくれた。息子とは『阪神で活躍して輪島塗を全国に広げられたら』とよく話をしています」と明かした。 育成契約でスタートする右投げ左打ちの遊撃手は、今夏行われた阪神との交流戦では二塁打を2本記録。広角に打て、今季の日本海リーグで3位タイの3本塁打を放ったパワー、同4位の15盗塁をマークした脚力を備える。川崎は「独立リーグと違って、試合数が100試合以上ある。まずはしっかりと体作りをして支配下選手(が目標)。早く1軍に定着して、レギュラーの座を奪えるように必死に頑張っていきたい」と力を込める。 その先には大きな夢もある。甲子園球場内のショップで父が製造した輪島塗を販売することだ。実現のためにはまず支配下登録され、さらには1軍で活躍しないといけない。険しい道だが「そんなことができたらうれしい」とモチベーションは高まる。