箱根駅伝からパリ五輪へ…異色経歴で福岡初Vの吉田祐也だけではない…男子マラソン界の新星
花の2区では約15kmにも渡って名勝負を展開。互いに前を譲らなかった。どちらかが前に出ると、すぐに追いつき、さらにスピードを上げる。世界大会のトラック種目のようにペースの上げ下げを繰り返しながら、起伏のある23.1kmを相澤は1時間5分57秒、伊藤は1時間6分18秒で走破。ともに日本人最高記録(1時間6分45秒)を大きく上回り、歴代のエースたちを凌駕する記録を叩き出した。 そんな2人は12月4日の日本選手権10000mでも度肝を抜くような走りを見せている。7600m付近からはマッチレースとなり、力と力をぶつけ合った。相澤は2015年に村山紘太(27、旭化成)が樹立した日本記録(27分29秒69)を10秒以上も塗り替える27分18秒75で完勝。2位の伊藤も27分25秒73の日本新をマークして、ともに東京五輪参加標準記録(27分28秒00)をクリアした。 近年は佐藤悠基(34、SGホールディングス)、大迫、設楽悠太(28、Honda)らトラックで活躍してきた実力者がマラソンに本格参戦した影響もあり、トラック種目のタイムは停滞していた。しかし、相澤と伊藤の登場で日本長距離界は“新時代”に突入した。 男子10000mの東京五輪代表が内定した相澤は、「マラソンで結果を残すことが最終目標ではあるんですけど、その前にまずは10000mで結果を残したい。同郷の大先輩である円谷幸吉さんも64年の東京五輪はマラソンだけでなく10000mにも出場されています。東京五輪の10000mをステップにして、マラソンにつなげていければなと思っています」と話す。 伊藤も東京五輪の男子10000m代表に大きく前進した。「またしても相澤選手に負けたのが悔しいです。(東京五輪で)結果を残すためには、さらにレベルの高い練習をしないといけないと思っています。次は相澤選手が出した日本記録を更新したい。それから26分台も狙っていきたい」と日本人には未知なる領域への挑戦も口にした。 2人とも東京五輪は10000mで勝負することになるが、ともにパリ五輪はマラソンで出場したい意向を持つ。早ければ来冬にマラソンデビューする可能性があり、その動向が注目されている。 男子マラソンの日本記録は大迫が保持する2時間5分29秒。相澤と伊藤は日本選手権10000mで、自己ベストをマークした大迫に10秒以上も勝っている。吉田を指導する花田監督は「2時間4分台」というタイムを口にしたが、スピードで勝る相澤と伊藤なら、それ以上の記録が望めるかもしれない。 同学年の3人は27歳になるシーズンにパリ五輪を迎えることになる。東京五輪代表組も円熟期となる頃だ。日本のマラソン界はまだまだ“進化”するだろう。 (文責・酒井政人/スポーツライター)