箱根駅伝からパリ五輪へ…異色経歴で福岡初Vの吉田祐也だけではない…男子マラソン界の新星
「別府大分は紙一重の状態で、たまたま成功したんです。でも、準備をすれば確実にマラソンで記録が伸ばせるという確信がありました。学生時代は努力を評価してくださる方もいたんですけど、今は結果がすべてだと思っています。内定を辞退したブルボンさんに対しても、受け入れてくれたGMOインターネットグループに対しても、競技を続けてくれて良かったと感じてもらえるような結果を残さないといけません」 結果にこだわる“プロ意識”が吉田をさらに強くした。GMOインターネットグループの花田勝彦監督が「(練習を)とめるのが仕事」というほどトレーニングをこなしている。 「練習自体は朝1時間半、午後2時間ほどなんですけど、吉田は競技にかける時間が長いんです。ウォーミングアップはしっかりやっていますし、セルフケアにも2時間ほどかけている。食事も含めて、すべての行動がマラソンで結果を出すためにつながっていて、それが自然体でできるんです」(花田監督) さらにマラソンに対しての知識も貪欲に吸収してきた。「正しい努力を地道に継続することが一番」と考えている吉田は、運動生理学や心理学の論文などを熟読。トレーニングの意図と効果を理解することで、練習濃度を高めてきた。 また東京五輪代表に内定している大迫傑(29、Nike)の位置取りを研究して、給水を取りやすいように集団では後方の左側を意識して走ったという。向かい風が吹けば、集団のなかに下がるなど、レース中は「省エネ」を徹底した。 「マラソンはいかに妥協のない準備ができるかがポイントだと思っています。今回はやり残したことがない状態でスタートラインに立てた。それが一番かなと思います」(吉田) その結果が2度目のマラソンとなる福岡国際での優勝だった。
学生時代は縁のない世界だと感じていた「オリンピック」にも一気に近づいてきた。それだけに今回は服部の欠場が心残りだったという。 「自分の可能性を試したいと思っていたので、服部勇馬さんの欠場は心情的に残念でした。次は日本代表を争うような大きな大会で服部勇馬さんに勝って、正真正銘の日本一だと言われるように努力していきたい」と吉田は“近未来”を見つめていた。2024年のパリ五輪候補に名乗りを上げたかたちだ。 花田監督も「世界の舞台でメダルを争うには足りない部分がある。スキル的な部分では7割くらいしかやっていないので、2時間4分台は出せるんじゃないかなと思っています」と吉田のポテンシャルを高く評価している。 近年はナイキ厚底シューズの影響もあり、マラソンや駅伝は好タイムが続出している。選手たちのマインドも大きく切り替わった。マラソンにおいてキロ3分00秒を切るスピードはもはやハイペースではない。 瀬古リーダーも、「2時間5分台を目指すようなペースが当たり前になった。選手は速いという意識はないと思うんですよね。10000mにしても、5000mを13分40秒で平気で通過しています。マラソンもトラックもレベルアップしている。10000m27分台で走った選手はマラソン予備軍なので、日本のマラソンは5~6年は大丈夫だと思いますよ。先日の日本選手権10000mでは27分台で18人が走っていますから」と話している。 では、2024年パリ五輪の男子マラソン代表候補は誰になるのだろうか。 東京五輪代表内定の大迫、中村匠吾(28、富士通)、服部の3人は、それぞれ29歳、28歳、27歳になる年にオリンピックを迎えていたはずだった。彼らの年齢、実力、ポテンシャルを考えると1年の延期はプラス要素が多い。しかし、2024年パリ五輪では“世代交代“が進んでいる可能性は十分ある。 東京五輪代表組を除くと、2024年パリ五輪代表候補は今年正月の箱根駅伝を沸かせた3人が有力だ。ひとりは今回飛び出した吉田。4区で区間賞を獲得した。あとの2人はマラソン未経験だが、吉田以上に“爆発力”がある。東洋大OBの相澤晃(23、旭化成)と東京国際大OBの伊藤達彦(22、Honda)だ。