【日本市況】円上昇、物価上振れリスクと日銀-総裁会見中に一段高
(ブルームバーグ): 31日の日本市場では円相場が対ドルで上昇。日本銀行は予想通り金融政策を維持したが、来年度物価の上振れリスクの記述を維持して円買いにつながった。植田和男総裁の会見中に「時間的余裕」を巡る発言で一段高となっている。
日銀が政策金利を維持、海外経済・市場動向の影響見極めと明記
円相場は1ドル=152円台前半と前日比で上げを広げている。31日の金融政策決定会合で日銀は政策金利の無担保コール翌日物金利を0.25%程度で維持することを決めた。同時に経済・物価情勢の展望(展望リポート)の物価見通しで2025年度は「上振れリスクの方が大きい」との記述を継続した。日銀はそれほどハト派的ではなかったと受け止められ、円買い・ドル売りが優勢になった。株式は売りに押され、債券は上昇した。
日銀は金融正常化の姿勢を継続しており、追加利上げの時期を巡る市場参加者の思惑が相場を動かす。米国では雇用統計や金融政策決定、大統領選が迫り、結果次第で12月や来年1月の日銀会合での利上げ確率が上下する。衆議院選挙での与党過半数割れは政権運営の不安定化を通じて金融政策維持の方向に作用している。
みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストは、経済・物価情勢を日銀は「オントラック」とみているとして「ボードメンバーが近い将来の追加利上げを視野に入れている状況に変化はなさそうだ」とリポートで指摘。早ければ12月会合で追加利上げに踏み切ると予想した。同時に政府から支持が得られにくくなる可能性もあり、追加利上げが来年1月にずれ込む要因の一つになり得ると付け加えた。
金融政策見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)での日銀の0.25ポイント追加利上げ予想は、現時点で12月会合が27%、来年1月会合まででは64%になった。
日銀の植田総裁は記者会見で、物価や経済の見通しが実現していけば政策金利を引き上げ、緩和度合いを調整すると述べた。為替相場については、過去に比べ物価に影響が大きくなっているなどと語った。また8月から使っている政策判断での「時間的余裕」について、米経済がもう少しいい動き続けば表現が不要になると話した。