【#佐藤優のシン世界地図探索51】宗教家が導くプーチンの「ウクライナ戦争処理」
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! 【写真】停戦を促したフランシスコ教皇 * * * 3月17日に行なわれたロシアの大統領選挙では、プーチン大統領が87%の得票率で圧勝した。そのプーチン露大統領がこれから取り組もうとする事と、とある著名なふたりの宗教家が発した言葉に深い接点があるようで...。 ――選挙で当選したプーチン露大統領は、最初に何から手を付けますかね? 佐藤 ウクライナ戦争の処理です。ここには、皆さんもよく知っているあるふたりの宗教家の言葉が関係してくると思います。 ――それは何ですか? 佐藤 まず、昨年の11月に亡くなった、創価学会の池田大作名誉会長の書いた小説、『人間革命』の冒頭の一節にある言葉です。 『戦争ほど残酷なものはない。 戦争ほど悲惨なものはない。 だが、その戦争はまだ続いていた。 愚かな指導者たちに、率いられた国民もまた、まことにあわれである』 そして、3月9日にはカトリック教会の最高責任者・フランシスコ教皇がこう発言しました。 『最も強いのは、状況を見て、国民のことを考え、白旗をあげる勇気を持って交渉する人だと思う』 ――このふたりの言葉と、プーチン露大統領のウクライナ戦争の処理がどう関係してくるのですか? 佐藤 ローマ教皇の発言の全文は20日にスイスで公表され、それ以降、ウクライナ戦争に関する雰囲気が変わりました。だからプーチンは今、両面作戦を行なっています。 ひとつは和戦です。つまり講和ですね。 もうひとつは、ウクライナがつべこべ言うならば、黒海沿岸を全て獲って、モルドバ東部(沿ドニエストル地域)と併合し、ウクライナを完全な「内陸国」にすることです。モルドバとウクライナの陸上国境である「沿ドニエストル共和国」で今、ちょっとしたトラブルが起きています。それを利用して黒海を獲るつもりです。 ――ドニエストルはモルドバからの強い圧力を受けたと主張し、2月末にプーチン露大統領に対して警護を求めていますね。