ドコモがレーシングゲームを開発、“親子NFT”を活用し意識させないWeb3体験を提供
NTTドコモは20日、非代替性トークン“NFT”の規格「ERC6551」を使用したレーシングゲーム「GT6551」を提供すると発表した。β版を2025年1月29日、正式版を2025年春に提供を開始する。 【画像】開発中のイメージ ■ 複数のNFTを子にできる新規格を活用 NFTは、ブロックチェーン技術によりそのコンテンツが本物で唯一無二のものだと証明されるデジタルデータ。それぞれに固有のアドレスが割り当てられ複製が困難であるため、NFTに希少価値を持たせられたり、転売されるたびに制作者が手数料を受け取れたりするなど、これまでのデジタルコンテンツにはない特徴を持っている。 今回は、NFTの規格「ERC6551」を活用したレーシングゲームが提供される。この「ERC6551」は、1つのNFTに紐付く形でNFTを複数ぶら下げることができる規格で、いわばNFTに親子関係を持たせられる。 従来は、NFTはそれぞれ独立しており、関係を持たせられないものだった。今回の「ERC6551」では、1つの“親NFT”に対して複数の“子NFT”を入れられる。 履歴書を例にすると、通常の履歴書には、学歴や保有資格などを記入する欄があるが、証明書などを添付しない限りその履歴が正しいものかわからない。記入者が虚偽の記載をしていたり、証明書自体を偽造していたりする可能性もある。このNFTでは、履歴書を“親NFT”、証明書や卒業証書などを“子NFT”とすれば、親NFTの情報を渡せば学歴や資格の証明書まで一度で確認できる。学校や資格を認定する機関が証明書をNFTで発行すれば、その証明書が唯一無二であることが証明できるので、履歴書の確からしさがより高くなる。 また、スタンプやクーポンなどの台紙としての使い方もできる。台紙を“親NFT”と見なして、スタンプやクーポンを“子NFT”と見なせば、お店に来店する度に「スタンプのNFT」を“子NFT”とし、クーポンが付与されれば「クーポンのNFT」を紐付ける。クーポンを使用する際には「クーポンのNFT」を切り離してお店に渡すことでサービスを受けられる、といった具合だ。 さらに、大量のNFTを取引する際、従来はウォレット間の移動はNFTごとに処理する必要があり手間やコストがかかっていた。「ERC6551」では、1つのNFTに複数のNFTを“子NFT”にすれば“親NFT”を移動させるだけでまとめて取引できる。 ■ 「GT6551」はレーシングマシンを“親NFT”に見立てる ドコモのレーシングゲーム「GT6551」では、NFTの規格「ERC6551」の特徴を活かし、1つのレーシングマシンを“親NFT”とし、エンジンやドライバーなどのNFTを“子NFT”としている。ゲームというよりはプラットフォームに近い印象だが、正式版ではユーザー自身がNFTを組み合わせてオリジナルマシンを組めるようになる。 ゲームでは、エンジンなど「部品NFT」と「ドライバーNFT」を組み合わせ、性能やデザインをカスタマイズできる。ゲームは、Webブラウザでアクセス可能なドコモのWeb3プラットフォーム「MetaMe」で提供され、カスタマイズ用NFTはMetaMeのショップで取引できる。“子NFT”で性能やデザインをカスタマイズできるブロックチェーンゲームの提供は世界初だという。 たとえば、さまざまなNFTで組まれたカスタムマシンを“親NFT”の取引だけでマシン丸ごと転売、譲渡できる。また、ゲームやプラットフォームの枠を超えて取引することも目指す世界として掲げており、ほかのゲームで使用したりパブリックビューイングでの観戦イベントを実施したりすることが考えられる。NFT単体での取引もできるため、たとえば企業がプロモーション用のNFTを発行したり、アニメやゲームなどほかのIPが登場するNFTを発行したりすることで、より市場の活性化が期待できる。 ■ 実験的なプロジェクト、2025年春に完成版ローンチ NFTについて、世界のNFT取引高は2021年を頂点に下落している。ドコモ R&D戦略部社会実装推進担当部長の住谷哲夫氏は、「数年前に非常に投機的な盛り上がりを見せたが、一旦その動きが落ち着いている状況」と分析。一方で「NFT自体で価値を出す動きが出てきている。たとえば楽しさや便利さといったNFTの特徴を活かす動きが出てきている」と市場が再び活性化すると予想する。 また、「Web3」技術に一般のユーザーはまだ親しみを持っていないのが現状だ。住谷氏は「難しさを意識させないNFT活用が求められている」とし、今回はレーシングゲームを門戸に、ユーザー層の開拓を図っていくものと見られる。 R&D戦略部社会実装推進担当主査の金井智彦氏によると、ベトナムやシンガポールなど世界では活発な地域がある一方、日本の市場は大きいとは言えない。しかしながら伸びる余地があるといい、実証的な取り組みであるとしながらも、日本国内で一定の大きさのものにしたいと意気込む。 まずは、2025年1月29日にβ版が公開されるが、NFTのカスタムは未実装となる。2月以降に部品NFTとドライバーNFTの先行販売が始まり、2025年春にNFTカスタムができる正式版の提供が開始される。
ケータイ Watch,竹野 弘祐