【記者のベストレース2024】信じるからこそ道は開ける 未来をつかみ取ったニシノデイジーの中山大障害/後藤俊輔
後藤俊輔【中山大障害・ニシノデイジー】
9頭立てながら3頭が落馬となり、今年も激しい戦いが繰り広げられた中山大障害。制したのは4番人気のニシノデイジー(牡8・高木)だった。一昨年の当レースを制してからは7戦して勝ち星がなかったが、持ち前の持久力と巧みな飛越を駆使し、見事王者に返り咲いた。そして、レース後に届いた吉報…西山茂行オーナーが自身のブログで同馬の引退→種牡馬入りを表明した。 ペルシアンナイト(マイルCS)、ブラストワンピース(有馬記念)といったGⅠ馬でさえ果たせなかったハービンジャー産駒のスタッドイン。そして、西山オーナー自身もつづっていたようにニシノデイジーの種牡馬入りにはもう一つ、大きな側面がある。祖母ニシノミライは父セイウンスカイ(GⅠ皐月賞、菊花賞)、母ニシノフラワー(GⅠ桜花賞、スプリンターズS)と、まさに西山牧場の〝結晶〟。芦毛の名馬セイウンスカイを血統表に残せるだけなく、自身が所有されている繁殖との配合ではニシノフラワーのクロスもつくることが可能となる。さらにいえば、産駒から見ればサンデーサイレンスの血も4代目と薄まるだけに、配合のバリエーションはより豊富になってくるだろう。 2018年11月のGⅡ東京スポーツ杯2歳Sを制してから平地での勝利こそなかったものの、2度の中山大障害制覇を手土産に堂々と種牡馬入りを果たすニシノデイジー。入障後、一度も落馬することなく12戦を戦い抜いたからこその勲章であり、関係者の努力だけでなく、西山牧場の〝血の力〟を改めて見せつけられた気がする。未来は誰にも分からないが、それでも信じるからこそ道は開ける。一気にスパートして先頭に立つニシノデイジーの姿には、人だけでなく、間違いなくさまざまな馬の思いも乗り移っていた。血をつなぐという意味でも、この中山大障害を2024年のベストレースとしたい。
後藤 俊輔