北陸新幹線京都駅で「地下水への影響」問題が勃発!酒造り・染色…伝統産業への影響を危惧する市長の懸念は南北案・桂川案では「杞憂」だ
「南北案」は既に作られている京都駅と同程度の深さ
ただし、以上はあくまでも「トンネルについての一般論」であり、「駅構造物」については、地下水への影響が存在することも考えられます。 ついてはこの技術報告を改めて確認したところ、駅の位置、ならびに構造物については15、16ページ目に記載されていました。 これを見ると、3案の内「東西案」「南北案」は松井市長が懸念を表明した酒蔵をはじめとした地下水を活用した京都の伝統産業がその駅の「下流側」に存在しており、松井氏が指摘するリスクがある可能性があります。しかし、「桂川案」は下流側にそうした京都の伝統産業が前者の二案より少なく、地下水へのリスクは顕著なものとはならないと考えられます。 では、「東西案」「南北案」のリスクについて考えてみますと、両者の間には大きな相違があることが、当該資料の16ページ目から読み取れます。 まず、「東西案」は地下構造物(つまり「駅」)が50メートルの深さに達している一方、「南北案」のそれは20メートルの深さ以内に収まっています。 したがって、浅いところまでしか駅を作らない「南北案」の方が、深いところまで駅を作る「東西案」に比して、地下水への影響が圧倒的に僅少であることは確実です。 そもそも京都の地下水の多くは、10メートルや20メートルといった浅いところに「だけ」水が流れているということはなく、より深いところの層と面的に一体となって流れています。もちろん詳細は調査をしないとわかりませんが、少なくとも一般論で考えれば、「浅い南北案」は「深い東西案」よりも地下水への影響は限定的であり、かつ、影響が仮にあるとしても限定的な水準であると考えられます。 しかも、東西案は南北の水の流れを「せき止める」ことができる面積が広い一方――とはいえそれは、南北案に比べて相対的にという主旨であって、流域断面積全体から考えると、極めて僅少な面積であると言うこともできますが――南北案はその面積もまた最小化されているという点からも、「南北案」地下水の影響は限定的であると考えられます。 さらに言うなら、「南北案」の20メートルの深さといえば、現在の京都市地下鉄烏丸線の京都駅と同じです。したがって、仮に南北案が地下水に影響があったとしても、当該地下鉄の駅がもたらしている影響と同程度だという事になります。そして、その地下鉄の駅がつくられたからといって大きな地下水への悪影響があったとは報道されていないので、この点からも、南北案の影響はほぼ無いか、あるいは仮にあったとしても僅少であると考えられます。