東京から福島に来た17歳、念願の漁師に 処理水への不安抱えつつ夢追う
取材を終えて
昨年度に26人の新人が福島県の沿岸漁業に加わった統計を6月に知った時の驚きは鮮明に覚えています。漁師の取材をする中で、福島の漁業は「後継者不足」に悩まされてきたことを知っていました。どんな仕事においても、支えるのは「人」です。なぜこのタイミングで就業者が過去最多となったのか。取材を進める中で、震災をきっかけに家業を自分たちで守りたいと志す、漁師が増えたことが理由の一つではと感じるようになりました。 今回取材した原さんは、福島での操業に対する強い思いと行動力は、家業を継いだ地元出身の新人漁師さんにも負けていないように感じます。そして、「とにかく魚をいっぱい捕りたい」と漁を純粋に楽しんでいる笑顔はとても印象的で、明るい福島の漁業の未来を想像させられます。 若手が福島の漁業を担い、盛り上げて欲しいと期待を寄せるのは先輩漁業者たちです。原さんを受け入れた髙橋船長もその一人。小学2年生の時に父が船の事故で片腕を失い、中学卒業するタイミングで祖父がガンで入院し、その後、亡くなったといいます。代々続く家業を継ぎましたが、憧れた漁を学びたくても、船で直接教えてもらえる「先輩」はいなかったそうです。だからこそ、福島で漁を続けたい原さんに対し、「背中で語る」ではなく、1つ1つ丁寧に操業の仕方を具体的に教えています。その姿に「次の世代を育てたい本気さ」を感じます。 しかし、若手漁師にとっても、先輩漁師にとっても、立ちはだかるのは原発事故の壁です。30年以上続くとされる処理水の放出に、先が見えない廃炉作業が続く中、常に風評被害の不安を抱えています。政府と東京電力による迅速かつ安全安心な廃炉作業は進めてほしいと思います。そして、消費者の一人一人に福島の漁業の現状への関心や理解を示してもらい、応援の輪が広がっていってほしいです。未来への明るい道を切り開く若手漁師が育ちつつある福島の漁業、不安なく魚を捕れる日が1日でも早く訪れることを願っています。 ※この記事は福島中央テレビとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。
福島中央テレビ