放送界の先人たち・武敬子氏~「男女7人夏物語」にさんま起用のわけ~【調査情報デジタル】
久野:最優秀賞もらってんだから。それで武さん、一挙に有名になっちゃった。 武:でも、生意気だったんだろうね。もうみんなに、いろいろなことでえらいこと怒られたな。 久野:しかし、すごいのはその後で、昭和35、38、39年と、民放祭の賞を取り続けた 。 武:うん。やっぱり仕事していくと、好きな作家が出てくるじゃない。 久野:矢代静一※。 ※矢代静一 (1927-1998) 劇作家、演出家。代表作「写楽考」「北斎漫画」など。 武:そうそう。矢代さん好きだったからね。 久野:その後親しくつきあったのは寺山君※ですね。武さんとこ行って、ご飯食べてたんだから。 ※寺山修司 (1935-1983) 詩人、劇作家。前衛劇団「天井桟敷」主宰。代表作「田園に死す」(歌集・映画)など。 武:そうそう、お昼ね。もう、しょっちゅうご飯食べに来てたの。お金がなくなると、人のとこへ来るんだもん。それで「あのーお金ないから行きたいんだけど」って電話かかってくるとさ、やっぱりカレーライスぐらい奢ってあげられると思うから、いいよって。その頃、あたし金持ちだったのかね?全然お金持ってた感じがないんだけど、そう返事したのよね。 久野:寺山君のアパートにも行ったことあるって。 武:行った、行った。だって、どんなとこに住んでんのか知りたいじゃない。そしたら意外なことに、ものすごくきれいにしてる6畳なわけ。真ん中にテレビが1台あるきりで、あとはほとんど棚の上の本なんだけど、やっぱりいい本があったね。「はあ、よう勉強しとるな」っていうね。もう、その本見て好きになっちゃった。ああ、この作家やっぱりいい作家だと。 久野:武さんを育てた人で、もう1人、戸板康二※さん。この人とは、どうしてあんなに、親しくつきあってたんですか。 ※ 戸板康二(1915-1993)演劇・歌舞伎評論家、随筆家。特に歌舞伎への造詣が深く、批評、入門書など執筆多数。 武:(戸板さんが)民放祭の審査員だったの。賞を頂いたあとに「吉村忠夫さんを偲ぶ会」があって、そこに戸板先生も見えてたの。賞を貰っていたので、ご挨拶したんですけど、その時「髪結新三」っていう歌舞伎の話をしたのね。勘三郎さんの名作なんだけど。そしたら帰りに「髪結新三」の話は面白かったっておっしゃって「いつかまた芝居で会おうね」と言ったのが、初めの出会い。それからは、一緒にお芝居を見に行くようになって。