「牛は環境破壊の悪者じゃない」BAKE創業者が山地放牧を目指すワケ
世の中の放牧に対する関心度を上げる
2022年10月には、札幌市郊外の盤渓地区に農場を開設した。この森に囲まれた盤渓農場で行われているのは、放牧酪農の一種である山地酪農が環境再生に貢献することを証明する実験だ。牛や馬を森に放牧し、土壌の変化や植生の遷移を長期間にわたって観測していく。 「盤渓のような放置された森はあまり炭素吸収をしていないそうです。そこに動物が入って活動することで、土壌が変わり炭素吸収量が何倍にもなる可能性がある。日本の国土の7割は森林で、そのほとんどが未活用地です。時間はかかりますが、この広大な山地を活用できれば酪農のブレイクスルーになるはず」 アグリテック企業への投資や、UAが土地の購入と設備投資を行い運営事業者らの負担を減らすシェアミルカー制度にも力を入れ、放牧の取り組みの輪を広げている。しかし、日本では一般的な牛乳と放牧牛乳は混ぜ合わせて流通されており、放牧牛乳の価値が正当に評価されていない。そこで立ち上げたのが「CHEESE WONDER」だ。消費者に放牧牛乳の価値と、その背景にある持続可能な酪農・農業のあり方、さらには地球環境への配慮まで、「おいしさ」を通して伝える役割も担っている。 「しっかりはやるおいしいお菓子をつくって若い世代にリーチする。世の中の放牧に対する関心度を上げることが、今の自分の使命だと考えているんです」 長沼真太郎◎1986年、北海道生まれ。慶應義塾大学商学部卒。商社勤務などを経て、2013年BAKEを創業。大ヒットの後にバイアウトし、渡米。2022年、北海道コンフェクトグループ代表取締役に就任。北海道を拠点にお菓子づくりや環境づくりに邁進する。
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