なぜ韓国・尹大統領は「非常戒厳」に踏み切ったのか 日本でも燻っている「石破首相に適切な助言する人が不在なのでは?」問題
【ニッポン放送・飯田浩司のそこまで言うか!】 先週3日の深夜に起こった、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳」布告。結果、6時間後には解除となりましたが、その衝撃は今も世界を駆けめぐっています。 【表でみる】過去に弾劾訴追された韓国大統領と主な理由 日本国内では「民主主義の勝利!」との報道が相次ぎました。もちろん、そうした面はありますが、一方で「民主主義のコスト」もこれで増大したことを忘れてはいけません。 今後、韓国の権力の中心は最大野党「共に民主党」に移っていくでしょう。その外交スタンスの中心は「日本からの離反」です。尹氏への弾劾決議案にそれが色濃くにじんでいて、以下のように日本との協調路線を厳しく批判しました。 「いわゆる価値外交という名目で地政学的バランスを無視したまま、北朝鮮や中国、ロシアを敵視し、日本中心の奇妙な外交政策を主張し、日本に傾倒した人物を政府の要職に任命するなどの政策を展開することで、北東アジアで孤立を招き、戦争の危機を引き起こし、国家安全保障と国民保護義務を放棄してきた」 日韓関係の改善に関しては、最近の韓国内の世論調査では評価する声が徐々に大きくなってきていました。特に、若年層はその傾向が強いとされていましたが、今回の一件でまた韓国版「団塊の世代」とも呼ばれる「386世代」が意思決定の中心となるでしょう。 386世代は「共に民主党」の支持母体にして、進歩的、反米志向とされています。米国の同盟国、日本との関係も厳しくなることがすでに指摘されています。尹政権のうちに、今度こそ前提を反故(ほご)にされない枠組みを作っておこうとしていた各所の努力も水泡に帰しそうです。地域全体が不安定になるのは避けられないでしょう。 問題は、こうした結末は見えていたのに、どうして尹氏が「非常戒厳」に踏み切ったのか? 前国防相が進言したと言われます。「非常戒厳」は表向きの理由で「実は選挙違反の捜査が主目的だった」という情報も出てきました。ただ、政治的な力を決定的に失うことと釣り合うとは到底思えません。 前国防相以外の他の閣僚はどうしていたのか? 多方面から正確な情報が入っていたのか? 発令を閣議にはかったところ、多くの閣僚が猛反対していたといいます。権力の集中する大統領制では難しいのかもしれませんが、耳の痛い情報まで上げるような機能が機能しなかったのでしょうか? あるいは、少数与党でレームダック(死に体)の大統領には、情報を上げても意味がないと冷笑的だったのか?