エリックサウス稲田俊輔さんが語る、飲食店プロデュースの極意と「最高のランチの楽しみ方」
飲食店は「ワクワク感」を提供することが大事
続いてのトークテーマは、「飲食店経営における喜びと困難」。 「喜び」は、次々と新しいことに挑戦できることだ、と稲田さん。エリックサウスの店舗展開においても、各店舗独自のコンセプトを持たせることを大切にしているそう。 一方、近年最大の「困難」は、やはりコロナ禍だったと振り返ります。 コロナによって、飲食業界でじわじわと進行していた2つの課題──働いてくれる人が減っていくことと、お客様のアルコール離れが一気に表面化しました。 今はまず、淘汰を生き残ることだけを目標にしなければいけない、という雰囲気が漂っている気がします。 それでも稲田さんが、リスクを恐れず新しいことに挑むのは、「根本的には、自分が常にワクワクしていたいから」。ワクワクを求めることにも理由がある、とし、飲食店の役割を次のように分析します。 飲食店には、欲望充足産業と自己実現サポート業という2つの役割がある。 欲望充足産業は「空腹だからおいしいものを食べたい(できれば安く)」という基本的なニーズを満たすもの。 自己実現サポート業は、「こうなりたいという理想の自分」を叶えるものです。 飲食店から自己実現をサポートするとは、お客様に「この店で食べる自分」を好きになってもらうこと。そのうえで大切なのは、やっぱりワクワク感だ、と話す稲田さん。 どうお店にワクワク感をもたらすか。それは、やっている自分たちがワクワクしながらやれば、自然と伝わる、にじみ出る。 ワクワク感を提供していけば、大手と闘っても残っていけるのではないかと。 そしてそのワクワクは、新しいことに挑戦し続けなければ生まれない。「そういうふうに自分を正当化しています」と微笑む姿に、食への情熱と飲食業界への深い愛情を感じました。
ランチを楽しむコツ「1.5倍の法則」と「マインドフルネス」とは?
稲田さんご自身も、飲食店に足を運ぶときには「ワクワクするお店」を選んでいるとのこと。 選択肢が多くて迷いがちなランチを存分に楽しむ方法として、3つのポイントを教えてくれました。 1. 「ランチ1.5倍の法則」 エリアの相場の1.5倍程度を出すと、ランチの満足度が大幅に上がるという稲田さんの独自理論。相場800円のエリアなら、1200円くらいからクオリティが突然上がるのだとか。 2. 「仕事中のランチはメリハリが必要」 一番もったいないのは「毎回1000円」といった予算の使い方。普段はグッと抑え、ときどき「相場の1.5倍」を取り入れて、ランチの「ハレとケ(非日常と日常)」をプロデュース。本気になって探せば、ワンコインでも満足できる選択肢がかなりあるそうです。 3. 「一食一食を本気で楽しむ」 「ケ」のランチもおろそかにせず、本気で楽しむのが稲田流。一食一食に真剣に向き合うことで、満足感や幸福感が生まれてくる。そうでないと食べる意味がない、そう語ります。 「フードサイコパス」を自称するほど、食に対して常に本気な稲田さん。「マインドフルネスの感覚ですね」とモデレーターの遠藤が驚くと、「本当にそう。マインドフルネスは、食を楽しむことと完全に一致する概念だと思います」と大きく頷いていました。