金融機関から使途のない借入、企業の2割超が「ある」 金利0.5%上昇で、約6割の企業が「借入金を返済」
Q2.Q1で「使途がない借入金がある」と回答された方に伺います。現状より何%金利が上昇したら、特に使途のない借入金について返済、もしくは折り返し(約定返済後の再調達)での借入をやめますか?(択一回答)
◇0.5%上昇で約6割が「借入をやめる」 Q1で「1~10割」と回答した企業のうち、600社から回答を得た。 「0.1%上昇」で使途のない借入をやめると回答した企業は8.6%(52社)、「0.3%上昇」は24.1%(145社)、「0.5%上昇」は25.5%(153社)だった。一方、「0.5%上昇でも継続」は41.6%(250社)だった。 「0.5%上昇でも継続」と回答した企業の業種別(45分類、回答母数5以上)で、最も比率が高かったのは「飲食業」の62.5%(8社中、5社)だった。以下、「化学工業,石油製品製造業」の60.0%(10社中、6社)、「飲食料品卸売業」の58.8%(17社中、10社)と続く。 ◇ ◇ ◇ 金融機関から資金を調達している企業のうち、2割超の企業で使途のない借入金があることがわかった。「農・林・漁・鉱業」や「電気・ガス・熱供給・水道業」など、地域に根差す企業やインフラを担う業種で比率が高い。 使途のない借入金は、低金利という要素も欠かせない。金利のある世界が現実味を帯びるなか、当座の不要な借入金が返済に回る可能性が高い。今回のアンケート調査で、貸出金利が0.5%上昇すると、6割近くの企業が借入金を返済すると回答した。本業支援などで取引企業の資金ニーズを創出できない場合、企業向け貸出が低下する。金利上昇は、企業が金融機関を選択する契機にもなりかねず、金融機関のコンサルティング力がこれまで以上に試されそうだ。 一方、貸出利率が0.5%上昇しても、使途のない借入を継続すると回答した企業は4割を超えた。なかでも「飲食業」は62.5%に達した。コロナ禍や相次ぐ自然災害など、予期しないキャッシュフロー悪化への備えを潜在的に意識しているとみられる。貸出金利は中長期的に上昇することも想定され、企業も目先の利率上昇に捉われない財務戦略が求められる。
東京商工リサーチ