西武の黄金期野球を継承するのは誰?
プロ野球開幕を前に注目を集めているのは、元西武出身監督の手腕だ。偶然にも、パ・リーグでは、ロッテの伊東勤監督(53)、西武の田辺徳雄監督(49)、ソフトバンクの工藤公康監督(52)、楽天、大久保博元監督(48)と、1982年からリーグ優勝11度、日本一8度を成し遂げた西武の黄金期を知る4人が同時に指揮をとることになった。 戦力的にはソフトバンクが圧倒。大型補強をしたオリックスとソフトバンクを軸に優勝争いが展開すると予想されているが、下馬評では評価の高くないチームを上位に引き上げることこそがライオンズ魂。1982年からの監督4年間でリーグ優勝3回、日本一2回。西武の黄金期をスタートさせた広岡達朗氏(82)に彼らへの期待値と西武野球とは何かを聞いてみた。
ーー西武時代の教え子が4人も監督として戦います。 「工藤は、コーチ経験がなく初めての監督。大久保、田辺は、昨年、代理監督の経験はあるが、キャンプ、オープン戦とチーム作りを経ての監督は初めてで経験がないからね。それぞれが、監督としてどういった持ち味を出してくるのか、注目して見ている。伊東は、キャッチャー出身だけあって采配を見ていても視野が広い」 ――工藤、伊東は1982年の同期入団。大久保、田辺は1984年のドラフト1位、2位で、いずれも、広岡さんが監督時代でした。 「工藤は、熊谷組に内定していたが、故・根本さんが『絶対に来ないことはない。あきらめない』と、指名した。裏でどうのこうのという話はなかった。ただ西武本社と熊谷組の付き合いがあったので指名後は、丁寧にお詫びをして関係を修復した。大久保は、確か広沢(ヤクルトから巨人、阪神)の外れ1位だったな。キャッチャーとしてというよりもバッティングにセンスがあった。時間がかかるだろうが教えれば上手くなると」 ――西武野球とは何ですか? 「ひとことで言えば基本を中心とした平凡な野球だ。ピッチャーは低めのコントロールを磨き、アウトコース低めのストレートで勝負できるピッチャーを育てる。野球とは面白いスポーツで、そこに球威のあるボールを投げておけば、打球は正面を突く。バッターは引っ張る、右打ちではなく、センター返し。そして走者は常に次の塁を狙う。大事なのはチームプレーを大切にすること。投内連携、べースカバーといったチーププレーの基本を指導者が繰り返し繰り返し徹底していくと、選手が野球を覚え、勝ち方を知る。西武のいわゆる黄金期と言われたときは選手が勝ち方を知っていた」 ーーなるほど。確かに1985年のスタメンを見ると、まだ当時は若手の石毛、辻、秋山、伊東と言った名前が並んでいます。伊東、工藤らも、その広岡野球の基本の教えが、指導者としての根底にあると発言しています。監督として誰がその西武野球を継承、体言していくでしょうか? 「どうだろう。今の西武が、その野球を引き継いでいるかと言われれば、そうではない。今は、ピッチャーも落ちるボール、動くボールが全盛の時代。チームの内側から監督、コーチが選手を育てていこうという努力をほとんどのチームがしていない。特に阪神、巨人はひどい。彼ら(元西武OB)が、監督として、西武野球と言われる基本の野球を根気強く続けてチームを内側から強くしてもらうことを願うが」 (文責・駒沢悟/スポーツライター)