ダブレット井野が振り返る、アシックスとのコラボレーション
ジェイムス:ファブリックの開発、特注のディテール、カラビナなどのアクセサリーといった具合に、ここまで親切に対応してくださるブランドは多くありません。コラボの新作も単なる色違いを展開するわけではない。クリエイティブな存在だからこそ、コラボパートナーである我々も挑戦的になれるんです。 ジェイソン:いつかCEOにお会いしたり、本社でアーカイヴを拝見したりしてみたいですね。あとは、開発チームにクレイジーなアイデアを出したことを直接謝りたいです(笑)。
アシックス × 隈研吾コラボに込めた想い
⎯⎯ 隈研吾さんとのコラボは2019年から続いていますが、「アーキサイト オル(Archisite ORU)」のプロジェクトはいつスタートしたのでしょうか? 竹井惇(以下、竹井):2020年頃からですね。第1・2弾は共に即完売で、購入したお客様を中心に第3弾を望む声を多くいただいていました。その中で、「建築現場からホテルなどのリラックスシーンまで、履き変える必要のないスニーカーを作りたい」という隈さんのアイデアから開発がスタートしました。 ⎯⎯過去2作に続き、第3弾もインラインをベースとしない完全オリジナルモデルですが、この理由は? 竹井:“過去2作と親和性がありながら快適な足入れを担保”という考えをベースにサンプルを製作していたところ、「(過去2作でアッパーを構築していた)“やたら編み”をインナーの構造に採用すれば、リラックスかつ快適な履き心地を提供できるかもしれない」(隈)という逆転の発想が生まれたので、結果として自然とオリジナルモデルの開発に行き着いたんです。 ⎯⎯プロジェクトで苦慮した点はありましたか? 竹井:モデル名にもなっている“折る”ですね。折り方次第で自由な履き方と快適性のコントロールができるよう、素材選びではトライ&エラーを繰り返し、折り紙をはじめとした折り方の研究もしました。また、隈さんはデザインポリシーとして、“1つのサーフェスを1つのマテリアルで作り上げる”を大切にされています。しかし、アッパーの外側に使用しているダイニーマという素材が、防水性や引裂強度に優れた高機能材ゆえにソールとの接着用の糊まで弾いてしまい、ダイニーマだけではソールと接着できない問題が生まれてしまったんです。最終的に、ダイニーマのキワに別生地を縫い付けることで接着できたのですが、解決に至るまでには紆余曲折がありましたね。 ⎯⎯そこまでダイニーマにこだわった理由とは? 竹井:外と中の境界が曖昧な建築を理想とされているようで、「人と人や、人と環境の関係性がシームレスになり、いろいろな意味で風通しがよくなる」とおっしゃられていました。ダイニーマは、そんな隈さんの理想を体現するかのような素材で、妥協しなかったからこそ「建築の未来を暗示するようなスニーカー」とまで評してくださいましたね。 ⎯⎯すでに第4弾モデルは着手されていますか? 竹井:「また作りたいよね」とおっしゃってくださいましたが、具体的な話は進んでいません。隈さんをはじめ、ファッション業界以外のパートナーの方々とコラボさせていただくことで、「アシックス」のスニーカーをより幅広いお客様に届けることができるので、私自身はぜひ続けていきたいと思っています。