経営悪化はJR四国の責任にあらず「人口が少ないからサービス削減は言い訳」 関西大・宇都宮浄人教授、国策転換を求める
JR四国が人手不足を理由に9月29日から普通列車の減便に踏み切る。対象は朝夕の通勤通学の時間帯が中心で、利用者への影響は大きい。1987年の会社発足以降、鉄道事業は黒字になったことがなく、構造的な赤字体質を改善するため、駅の無人化や駅舎の簡素化を進めている。 【写真】バスに変身、世界初の二刀流 阿佐鉄DMVで室戸岬目指す
社員の給与まで低く抑えた結果、若手の離職が相次ぎ、採用数は計画に届かない状況に追い込まれた。人口減少を背景に赤字ローカル線の議論が本格化する中、経営の根幹が揺らいでいる。交通政策やヨーロッパの地域公共交通に詳しい関西大の宇都宮浄人教授は「経営悪化はJR四国の責任ではない」と指摘し、事業者任せだった鉄道インフラ維持に国や自治体が積極関与するよう転換を求めている。(共同通信=広川隆秀) ▽オーストリアの人口密度は島根と同程度 ―鉄道の先進地とされるヨーロッパで鉄道はどのような位置付けなのでしょうか。 「JR四国のような地域の鉄道は、社会インフラであり、そこで提供されるサービスは、事業者の収支のためではなく、地域の公共サービスという位置付けです」 「とりわけ、この20年余りは、持続可能な社会の実現という観点から、鉄道は二酸化炭素(CO2)の排出が少なく、エネルギー面でも効率性の高い交通手段として注目されています。欧州連合(EU)は、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指しています。そのため、物流や移動のためのインフラ投資を加速させ、鉄道への転換をさらに進めています。大都市圏だけでなく、地方都市圏においてもです」
―四国など人口が減少する日本の地方は鉄道の利用者が少なく、存廃の議論にまで発展しています。 「人口が少ないからサービスを減らすというのは言い訳に聞こえます。オーストリアの人口密度は島根県と同程度。首都ウィーンに次ぐ、第二の都市グラーツは人口約29万人です。松山市(約50万人)や高松市(約41万人)よりも圧倒的に少ないですが、街はにぎわっています。人口減少を理由にしていたら、ヨーロッパの公共交通はどこも成り立たなくなってしまいます」 「四国には潜在能力があります。しかし、今の制度では前向きな投資が思うようにできず、交通事業者は潜在需要を開拓できていません。郊外の商業施設もコンビニも、人口減少を理由にビジネスを縮小させることはしていませんよね」 ▽自由に移動するため多様な選択肢を ―鉄道インフラの維持・管理には多額のコストが必要です。鉄道会社が本来行うべきサービス向上のためにも公共インフラを社会で支える在り方が重要ですね。