経営悪化はJR四国の責任にあらず「人口が少ないからサービス削減は言い訳」 関西大・宇都宮浄人教授、国策転換を求める
「その通りです。収支のためにサービスを悪化させるという考えは、はっきり言って間違っています」 「人々が自由に移動するために、多様な選択肢を持てるのが望ましい社会です。ヨーロッパの人も自家用車を使いますし、車の利用はゼロにはなりません。しかし、酒を飲んだり、街を歩いて買い物をしたりしたい時、公共交通を使って外出できる。自動車が通らない広場のカフェで一息つくことができる。それが豊かな暮らしであり、魅力的な街づくりにつながるのです」 ▽経営の悪循環で利用者減少 ―JR四国は今回、はじめて広報報資料に「人手不足」と明示した減便を決めました。経営の苦しさをうかがわせます。 「民間企業が四国でインフラ設備を持って鉄道事業を行うというのは、国際的な標準から見てもあり得ないことです。そのため、国鉄から民営化する際、国は経営安定基金を手当てして、その運用益で会社の赤字を穴埋めする仕組みを作りました」 「しかし、その運用益は低金利によって破綻しました。それにもかかわらず、民営化した会社だから収支を良くしようという方向だけになると、サービスを削減したり、人件費を抑えたりすることにつながります。35年以上も続けてきた対症療法的な経営は悪循環を生み出し、さらなる利用者減を招きます。しかしこれは、JR四国単独の責任ではありません」
▽交通への投資を鉄道に切り替えたヨーロッパ ―会社の成り立ちや構造上、経営努力だけで収支改善するのは不可能ということですね。どのような仕組みが望ましいのでしょうか。 「(鉄道設備の所有と列車の運行を別々にする)上下分離みたいな形で、インフラ部分を社会が公的に支える仕組みが必要です。道路の場合、市道や県道があり、高速道路も国が整備してきました。一方で、鉄道に関しては事業者が全てを担うのでは、未来に向けた投資もできず、社会インフラとして正しい姿とはいえません。上下分離というと、公的な関与が再び強まるという印象をもつかもれませんが、むしろインフラ(下)を支えることで、サービス(上)を提供する民間事業者が力を発揮するしくみです。ヨーロッパの場合は、国鉄改革の過程で上下分離が採用され、民間活力を取り入れた経緯があります」 「JR四国は日本の交通ネットワークの一端も担っています。四国4県の自治体だけでなく、国の予算の使い方として鉄道にどの程度の予算を割り当てるのかという議論も地域として声を上げるべきです。ヨーロッパの主要国は、この20年余りの間、交通投資の予算を自動車道路から鉄道に切り替えてきました」