校正者は役目を終えたのか(4)ネットメディアに校正者は必要か
新聞や雑誌といった紙メディアに代わって、存在感を増しているのがインターネットメディアだ。ネット専業のメディアでは、校正業務をどう考えているのだろうか? 校正者は役目を終えたのか(3)ワープロ導入で持ち上がった「校閲不要論」
「従来の校正の体制はネットメディアにマッチしない」
東京・赤坂見附の交差点付近にあるオフィスビル・東京ガーデンテラス紀尾井タワーの21階にネットメディア「BuzzFeed Japan」のオフィスがある。ヤフーと米BuzzFeedの合弁会社で、2016年1月から記事の配信を始めた。校正担当者はいない。 朝日新聞の記者だった古田大輔編集長(40)は、こう説明する。「理由は2つある。1つは人件費の問題。米国の新聞社でもこの部門がなくなりつつある。もう1つは、新聞社のような従来の校正の体制は、ネットメディアにマッチしないためだ」 日刊紙や週刊誌や月刊誌の場合、締め切りが決まっている。制作スケジュールがある程度決まっており、校正者が記事に目を通すピークの時間帯も読みやすい。これに対し、ネットメディアであるBuzzFeed Japanでは、記事を随時配信しており、校正作業がいつ発生するのかが決まっていない。そのため、「校正スタッフを大手新聞社のように社内に置くのは合理的ではない」という考え方を採用している。決して、記事をチェックしないという意味ではない。ライターと編集者が校正作業を行っているという。
「校正の専任者を雇いたくとも雇えない」
東京・秋葉原近くに本拠地を置き、2013年5月にサービスを開始したネットメディア「ハフポスト日本版」も事情は同じだ。校正専門のスタッフはいない。その代わり、1本の記事を10人前後の編集者が見るという、厚いチェック体制を整えている。編集者向けに校正の勉強会を開くなど、編集者のスキルアップにも努めているという。 竹下隆一郎編集長(38)も朝日新聞の記者出身。ハフポストは2017年に初めて黒字化を達成したが、「多くのネットメディアはまだビジネス的に厳しく、校正の専任者を雇いたくとも雇えない」と打ち明ける。「言葉に対する人々の考え方も刻一刻と変化している。コストを抑えるためにも、たとえば表記ルールについては、ネットメディア同士で共有できるのではないか」と話し、業界全体での対応を呼びかける。 J-CASTニュース、ITmedia、マイナビニュースといった老舗のネットメディアにも校正を専門に行う担当者はおらず、編集者やライターが記事をチェックしているのだという。