校正者は役目を終えたのか(4)ネットメディアに校正者は必要か
LINE NEWSは校正・校閲部門を新設
同じインターネットメディアでも、LINE株式会社(東京都新宿区)が運営する「LINE NEWS」は、2017年3月に校正・校閲部門を新設した。 大きなきっかけとなったのは、2017年2月から予定されていたLINEアプリのニュースタブ追加だった。同社のポータル事業グループ第2メディア局の藤沼正明局長(45)は「機能の追加後は、いよいよ細かなミスも看過できない。影響力の大きさを考えて、校正・校閲部門の設置が決まった」と話す。 校正・校閲部門を置く前は、編集部員が校正者の役割を兼ねていたが、記事の誤りを見逃すケースもあった。プロの校正者が見るようになってから、校正・校閲の精度は明らかに上がったという。 インターネットのニュースサイトには、大きく分けて2種類ある。自社で記事を書くメディア企業と、他社の記事を買い集めてくるメディア企業だ。LINE NEWSやYahoo!ニュースは、基本的に後者に該当し、「プラットフォーマー」と呼ばれる。しかし、LINE NEWSは少し事情が異なる。買い集めてきた記事のなかから、編集部がおすすめの記事をピックアップし、それを短く書き直して再編集している。同社の校正・校閲部門がチェックする対象としているのは、自社で再編集した記事だ。 毎日、朝7時すぎから夜11時前まで、常時2、3人が8時間交代で校正作業を行っている。1日で、1人平均の担当記事数は40~50本。なんと1本あたり10分で校正を終わらせないと、8時間でこの本数はこなせない。ネットの校正者には、スピードが求められているのがよくわかる。 スタッフ数は15人。このうち、正社員は10人いるという。大手出版社や新聞社で社員の校正者が減っているのとは対照的だ。同社の2017年12月期決算は、売上高が前年比18.8%増の1671億円、当期利益が同19.4%増の81億円と、いずれも2桁増だった。校正・校閲部門を設置できるのは、こうした好調な業績もあるからだろう。藤沼局長は「少なくとも年内には、約20人体制にしたい」という。 メディアの覇権は、紙メディアからインターネットメディアに移りつつあるが、インターネットという新しいメディアに適した記事チェックのあり方をめぐって、いまはそのノウハウを作り上げていく過渡期なのかもしれない。 (取材・文:具志堅浩二)