人前での話 「うまく話すこと」より大事なこと 話を聞いた聞き手にアクションをとってもらう
あなたの心に残っている「話し方がうまい人」とはどんな人でしょうか? あっという間に時間がすぎるほど話に引き込まれた人? 一度もつまずかず流暢に話し切った人? 身振り手振りがうまかった人? どれも正解ではありますが、これだけでは不十分です。人前で話すということは、話すだけの理由があるはずです。それなのに「あの人は話し方がうまかった」しか聞き手の心に残らないことは、はたして成功と言えるのでしょうか。
※本記事は矢野香著『世界のトップリーダーが話す1分前までに行っていること』の内容を一部抜粋・再編集したものです。 ■人前で話すのは聞き手にアクションを取ってほしいから 例えば、上司に話しかけに行くとき、多くの人が「承認してほしい書類がある」「どうすればいいか指示がほしい」など目的があるはずです。その目的を達するためにコミュニケーションをとります。 ところが「人前で話す」という状況になった途端、「うまく話す」ことだけに気を取られがちです。そうではなく、この場合も同様に目的のために話す意識が必要です。
では、どのようなことを目的として話せばいいのでしょうか。いまひとつの例は「わかりやすく話をしたい」というもの。なぜなら、「わかりやすい」という基準はあいまいだからです。この場合は、「わかりやすさ」について具体的な指標を決めることをお勧めします。 例えば、説明途中に聞き手が大事なところでメモを取る。スマホから目をあげてスライドや資料を見る、というような「わかりやすさ」を確認できる聞き手の具体的行動を決めます。事後アンケートをとって理解度を確認するのもよいでしょう。
会社を代表して新年度の事業方針についてプレゼンしたあるクライアントは、具体的指標として「プレゼン後の懇親会で話しかけられる」という目標を設定しました。 本来は事業内容について説明すればよかったので、情報提供だけでも十分な場でした。しかし個人的成長のために、さらに先の目的を設定したのです。 懇親会では取引先の役員が名刺交換を求めてきたうえに、当日のうちに相手からメールまで届いたとのことでした。話の内容がしっかりと伝わり、相手を魅了した証でしょう。