令和でもその「厳しさ」は通用した…38年ぶり阪神日本一を成し遂げた名将・岡田彰布「マネジメント」の極意
選手のやる気を引き出す「岡田流マネジメント」
長谷川:名将たるゆえんはあの“厳しさ”。とはいえ2005~2008年の一次政権とは全然違いましたね。今はおじいちゃんが孫をみるような感じだから。昔はもっと緊張感がありました。 村瀬:そうですね。すごいなと思ったのが、ちゃんと選手への対応をアップデートしてきているところ。一見、ただ怒っているだけのおじいちゃんっぽく見えますけれども(笑) 長谷川:今年、神宮球場に阪神戦を観にいったとき、ラインナップを見て「何でサトテルがいないの?」と、驚いたことがあったんですよ。ケガかなと思ったら「頭を冷やしてこい」という懲罰降格みたいな感じで二軍へ行かせていた。 岡田さんはシーズン途中に、佐藤や森下(翔太)ら不動のレギュラーを次々と二軍に落としていました。ちょっと天狗になりそうなタイミングで「お前の代わりはいくらでもいるんだぞ」というのを暗に匂わせながら降格させる。でもそれって、シーズン中に主力をリフレッシュ、休養させることによって、結果的には終盤への戦力を整えているんですよね。 村瀬:間接的に選手に慢心を自覚させつつ、主力を休ませて戦力の温存を図り、9月に巻き返す土台を作っている。岡田さんの場合は、監督経験者がさらにキャリアを積んで、すべてを分かった上でペナントを戦っている感じがしました。 長谷川:「お前の代わりなんかいくらでもいるんだぞ」っていうことを、言葉で伝えるとパワハラになっちゃう。でも代わりに入った選手が活躍すれば、落とされた人は危機感を覚えるものですから。二軍から戻ってきた時には集中的に打ち出したりしますよね。 村瀬:名将って、選手のやる気を引き出すのが上手いんですよね。岡田さんの場合は、厳しい指導をしても、ちゃんとその意図が選手たちに伝わっている。 これは1960年の大洋ホエールズの話ですが、三原脩監督が選手を乗せまくって6年連続最下位から一気にリーグ初優勝させたことがありました。でもその翌年はまた最下位。その年の負けが込んだ時期に、三原さんが「お前ら、誰のおかげで優勝できたと思っているんだ」という言葉を放ってしまったそうです。 監督のそういう部分が見えると、選手の心はパッと離れていく。60年経っても人の心は変わらないですよ。岡田さんはリーダーとしての人心掌握に長けているんだと思います。