一体どこが「自己責任」なのか?社会から忘れられた悲しい存在「就職氷河期世代」の無念の歴史
まもなく50代に差しかかろうとしている「就職氷河期世代」。この世代は、第二次安倍政権(2012~2020年)を支持する人が多かったと言われている。しかしそれは、彼らが「ネトウヨ」だからではない……。著書『「わかりやすさ」を疑え』を上梓したニッポン放送アナウンサーの飯田浩司氏が、その「本当の理由」を分析する。 【写真】「50歳無職の男性」が職業訓練校で見せた「最悪の行為」
雇用環境が改善されつつある一方……
帝国データバンクと東京商工リサーチがまとめた2024年上半期の企業倒産件数によれば、半期で5000件近くに上り、物価高に加えて求人難、人件費高騰などによる人手不足倒産も増えてきているとのことです。 企業もそうならないようにできる限り採用時の条件を良くしたり、シニア層の定年を延長したり待遇を改善したりして、なんとか人を繋ぎ止めようと必死になっています。 実際、新卒者の給与水準は年々改善されていますし、定年を迎えても雇用延長は当たり前、それどころか正社員の定年を70歳まで延ばして給与水準を維持する企業も出るようになりました。 こうした雇用環境の改善は働くものにとって喜ばしいことではあるのですが、若手とシニアの間の中堅世代が置き去りになっている感は否めません。そしてこの層は、常に雇用の面で苦境に立たされ続けた世代でもありました。 この世代が生まれたのが1970年代から80年代初頭。当時、日本経済は第一次、第二次オイルショックを経てなお成長軌道にありました。 プラザ合意*後の円高不況などもありましたが、得意の自動車、家電に加えてハイテク産業も花開き、ハーバード大学のエズラ・ヴォーゲルが『ジャパンアズナンバーワン』を著したのもこの時代でした。 *1985年9月に行われた先進5カ国(米、英、仏、西独、日)蔵相・中央銀行総裁会議における、「ドル高を是正」のための為替市場への協調介入を旨とする合意 頑張れば報われる。そう教えられたこの世代の人々が社会に出たのは1990年代。そこで、身をもって社会の厳しさを知ることになります。 冷戦の終結、さらにバブル崩壊。日本は30年にわたるデフレの時代に入りました。既得権の打破、政治改革、構造改革、様々なスローガンが躍りましたが、この時代から日本は長きにわたる低迷を続けます。 成長がストップしてしまい、不安にさいなまれるとき、誰もが手元にあるものを必死に守ろうとします。経済面で見れば、土地や建物といった資産や収入源である仕事がそれにあたるでしょう。 あの90年代において、社会を動かす50代、60代だった団塊の世代の多くにとっては、それが「正社員」というステータスだったのかもしれません。これを維持しようとした時、犠牲になったのは社会に出たばかりの若者たちでした。今、中堅を迎えている世代、「就職氷河期世代」*です。 *バブル崩壊後の就職氷河期(1993年卒~2005年卒)に社会人となった、雇用面・社会福祉面・教育面での負担を強いられた世代。