一体どこが「自己責任」なのか?社会から忘れられた悲しい存在「就職氷河期世代」の無念の歴史
氷河期世代が安倍政権に期待した理由
社会に出てすぐ、そして2010年代初頭と2度にわたって経済失政の波をもろに被ったこの世代が、現状を打破する経済政策、アベノミクス*を掲げた第二次安倍政権に期待したのは自明の理でした。 *2012年12月に発足した第2次安倍晋三内閣による経済政策の総称。積極的金融緩和や財政支出でデフレーションを払拭し、規制緩和などで産業を育てることを目指した。 当時、普及しだしたTwitter(現X)などを中心に「ネトウヨ(ネット右翼)」という言葉を多く目にするようになり、若者の右傾化が問題だと言われましたが、この世代の安倍政権支持の根幹はイデオロギー的な傾倒よりも経済政策にあったのではないかと思います。 これを、第二次安倍政権の首相官邸で要職を占めていた元高官に言うと非常に驚かれ、そうだったのか! という顔をされました。 この元高官も1980年代に霞が関に入ったキャリア官僚。マクロ経済政策がここまで雇用や賃金といった国民生活に影響するということを、90年代以前にすでに社会人になっていた方々は実感としてご存知ないのかと思いました。 もちろん、民主党政権にも「デフレ脱却議連」などマクロ経済政策で経済を回復、成長させ、雇用を確保する政策を志向する人たちもいました。しかし、政権中枢、特に菅(直人)、野田両政権はむしろ真逆の消費税増税に走り出し、氷河期世代の失望を買いました。 自民党は消費税増税を決めた3党合意の当事者なので同じように失望されてもおかしくありませんでしたが、第二次安倍政権は消費税増税に対して懐疑的なメッセージを発信していたので、この政権ならば消費税増税を回避して経済を浮揚してくれるのではないか? という期待感がありました。 マクロ経済政策を打ち出して景気回復を訴える姿は今までの各政権にはなかったものでした。 それまでは、どこどこに予算をつけるというタイプのものか、どこどこの予算を切り詰めます、改革しますという、ミクロな政策を大きく見せるタイプが主流。2009年に民主党が政権を奪取した時のマニフェストの1つにガソリン税の暫定税率の廃止減税を掲げ、「ガソリン値下げ隊」がメディアで大きく報じられていたのは記憶に残るところです。 対照的にアベノミクスは大規模な金融緩和と機動的な財政出動、そして民間投資を喚起する成長戦略の三本の矢によって物価を上昇させて失業率を下げ、経済の好循環に繋げていくというマクロ経済政策の道筋を示しました。 何度も言いますが、この経済政策への期待感こそが当時の若年層が安倍政権を支持した原動力であったと今も私は思っています。