真央の完全復活は無理なのか?
笑顔はなかった。GPファイナル、フリースケーティングの演技を終えると、浅田真央(25歳、中京大)は、とても辛そうな表情を浮かべた。SPではまだ逆転可能な3位の位置につけていたが、FSでは冒頭のトリプルアクセルの着氷で手をつき、回転不足と判定された。マイナス採点となり、続く3回転+3回転の連続ジャンプは単発に終わり、後半の3回転フリップから入る3連続ジャンプにも回転不足とされ、終わってみれば、125.19点と低迷。SPとの計で194.32点となり、まさかの最下位の6位に終わった。 1年半のブランクからの復帰戦となった10月3日のジャパンオープンでは、日本チームの優勝に貢献、本格的な復帰となる11月6、7日のGPシリーズの中国杯では、SPで71.73、FSで、125.75 の計197.48で見事に優勝。真央、健在を世界にアピールしたが、11月27、28日のNHK杯ではジャンプにミスが目立ち、SPで62.50、FSで120.49の計182.99で3位。そして今回は最下位である。 演技に波があるのが、ブランク前からの浅田の課題ではあった。 だが、15歳で初出場して優勝して以来、GPファイナルでは、一度もメダル圏外がなかったこと(3度の優勝と2度の2位)が示すように、ここに調子のピークを持ってくることだけは守ってきた。そのリズムは経験として身に染み付いているはずだったが、本来、調子の波を上げていかねばならないGPファイナルで、スランプの波を右肩上がりに回復させることができなかった。 なぜなのか。 元全日本4位でフィギュアに関する著書もある現在インストラクターの今川知子さんは、「一年半のブランクを経た復帰戦、本格復帰初戦となるグランプリシリーズの中国杯は、何も考えず、雑念がなく、復帰できた嬉しさを胸に滑ることができましたが、次のNHK杯と今回は、色々と考え意識しすぎたように見えました。特にトリプルルッツのエッジを不正と判断されたことに対する苦手意識が、まるでトラウマとなって、力みにつながり、その前後にも影響を与えています。ブランク期間があったことからくる意識過剰で、本来の調子の波の作り方ができなかったのかもしれません」と見ている。