バルセロナの守護神探し難航で日本人の名前も浮上...「狂わないとやっていけない」特殊性
【バルサのGKの特異性】 ひとつだけ言えるのは、ペーニャにせよ、シュチェスニーにせよ、バルサのゴールマウスを守る重責は並ではない、ということだ。 ヤングボーイズ戦でも、バルサはほとんど攻め込まれる機会はなかった。しかし後半終了間際、立て続けに象徴的なシーンが訪れる。ハイラインの裏を破られる形で、一気にゴールを脅かされた。 ひとつ目は、高いラインをあっさり抜かれている。GKペーニャとの1対1から失点したと思われたが、これはVARのオフサイド判定に救われることになる。ふたつ目は、ハイラインからわずかに守備が遅れたところを、17歳でトップデビュー戦のDFアンドレス・クエンカが力技で相手に振りきられてしまう。またも1対1になったピンチは、ペーニャがカバーした。 「GKもフィールドプレーヤーのひとり」 それがヨハン・クライフ以来のバルサの基本理念である。つまり、GKは"最後の番人"というよりも"リベロ"という認識だ。「攻撃の美学」を重んじるチームでは、ハイラインでの守備で広いスペースをカバーし、攻撃ではビルドアップで端緒となるポジションと言える。カウンターに晒されるのは、ほとんど宿命的である。 「バルサのGKは、狂わないとやっていられない」 かつてラ・マシアから2002年にトップに上がり、多くの栄光に浴したGKビクトル・バルデス(2014年までバルセロナに所属。2017年引退)が語っていた言葉は重い。 「カンプ・ノウのファンは、バルサが前がかりに戦うのを好む。でも、失点すると『無様』という空気になる。GKはそこで絶対にミスが許されない。背中に"非難の土砂降り"を浴びる。その罵声はファンが発するものだけではない。手厳しい監督だったり、心情を理解できないチームメイトだったり、たとえ言葉にしなくても、『戦犯はお前だ』という気持ちが突き刺さって来るのさ」 世界でも際立った攻撃型のチームだけに、GKもフィールドプレーが求められる。足元のプレーでは、チャレンジが基本。つまり、自らのプレーが失点の契機になるリスクも背負っているのだ。