怖い“集団催眠”専業主婦年金3号はお得でズルイ
『週刊年金実務』という、年金界のできごとを毎週まとめて届けてくれる雑誌がある。福祉元年と呼ばれる1973年、公的年金に物価スライド制、賃金再評価という年金の成熟を加速する仕組みが導入された年に、創刊されている。このたび50周年記念として「年金制度のこれまでとこれから、10人に聞く」という企画が立ち上げられた。そこに書いた文章に加筆し、東洋経済編集部の協力を得てQ&A方式で前編、中編、後編に分けて記事を構成した。 【この記事の他の画像を見る】
中編の今回は、いまだ根強い批判がある専業主婦の年金3号について、歴史的経緯や制度の構造までを解説している。 前編「経済学者が間違い続けた年金理解は矯正可能か」(3月13日公開) ──日本が辿ってきた公的年金の歴史についてはどう評価するか。 ざっと振り返っていくと、1941年成立、翌1942年施行の労働者年金保険法(1944年に厚生年金保険法に改称)が、今の公的年金保険制度の発祥である。この時には比例保険料・比例給付であったが、1954年の改正で給付は定額プラス比例の2階建てとなる。続いて、1985年には単身者の定額部分を半分にし(1人当たり賃金が同じであれば、負担と給付は同じになる原理の徹底、第3号被保険者の誕生)、2004年には厚生年金の保険料に共同負担規定が入り、離婚時には、問答無用で2分割されることになる。
要するに、1941年時から比例保険料のまま、長く被保険者本人(概して夫)が全部自分のものだと思っていた年金への請求権は半分となり、2004年には3号分割(離婚分割)も導入されて、今では夫と同額の女性(配偶者)の年金権が確立している。 ■根強く残る3号制度への誤解 ──3号制度に対しては依然、不公平との批判が絶えません。 世の男性陣は3号制度をお得だと思っている節があるが、カマキリの雄が頭を雌に捧げて喜んでいるようなものだ(「年金周りでの後悔先に立たずの人生選択」を参照)。