アスベスト、新たに1232人を労災認定 解体工事は今後がピーク
建設作業などでアスベスト(石綿)を吸って肺がんや中皮腫などになり、2023年度に労災認定された人は1232人だった。厚生労働省が11日発表した。数十年の潜伏期間を経て発症することが多く、今後も年1千人程度の労災認定が続く見通しという。 石綿の健康被害で労災認定された人は、23年度までの累計で2万1875人となった。労災が時効となった元労働者の遺族に対する「特別遺族給付金」の支給決定は、23年度は159件あった。 ■975事業所で初の認定者 23年度に労災認定された人が働いていた事業場は1233カ所で、うち975カ所で初めて認定者が出た。05年の公表以降、労災認定者が出た事業場はのべ1万9367カ所となった。 石綿は天然の鉱物繊維で1970~90年代に大量に輸入され、安価な建材として耐火や保温の目的で広く使われた。だが、吸い込むと肺がんや中皮腫を発症する有害性が問題となり、国は2006年に製造や使用を全面禁止した。 石綿を含む建物は今後、解体工事のピークを迎えるとされ、解体業者は建物の事前調査や石綿の除去といった対策が義務づけられている。 健康被害をめぐっては、21年の最高裁判決で国と建材メーカーの責任が認定され、国は裁判を起こしていない被害者にも給付金を支給する基金を創設した。一方、メーカー側は基金に拠出せず、賠償判決が確定した人だけに補償している。(高橋諒子) ■電話相談を実施 厚生労働省や民間団体は12~13日に電話相談を受け付ける。連絡先は以下の通り。 ○厚労省(03・3595・3402)午前10時~午後5時 ○中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会(0120・117・554)午前10時~午後7時 ○建設アスベスト訴訟全国弁護団(0120・793・148、平日に常設)午前10時~午後5時 労災認定された事業場の一覧は、厚労省のウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46438.html)に掲載されている。
朝日新聞社