「『坂口健太郎』に僕自身の心が追いついていなかった」俳優業10年を振り返り思うこと
心臓移植を受けた人に取材して、先入観が覆された
――坂口さんは出演に際し、実際に心臓移植を受けた方に取材をされたそうですね。 当事者の方にお会いしてお話を伺ったり映像を拝見したりしましたが、最初の段階で驚いたのは、皆さん本当に元気で、体格もがっしりとされた方が多いということです。僕がお話しした方は大人になってから心臓に不調が出た方で、昔からの方とは異なりますが、とてもはつらつとされていました。 心臓移植が成功して合併症などが起こらなかったとしても、自分の心臓とは違うものを入れている以上、命のリミットが通常より短い可能性があることをわかっていて、それでもいま自分が呼吸して生きている喜びを朗らかに語っていらっしゃいました。取材の中で、「しんどい日々を送っているんじゃないか」という自分の勝手な先入観は早々に覆されました。
「物憂げな役」のオファーが多いことに思うこと
――イメージと実際のギャップの話でいうと、坂口さんは以前、「自分は明るい性格なのに、物憂げな役をオファーされることが多い」と語っていらっしゃいましたね。今回の成瀬も、雄介の心臓を移植する前は物静かで内省的な性格です。 そうですね。ただ、僕は演じるときに自分にないことはできないと思っています。自分にできることの範囲を広げることはできるけれど、そもそも自分の中に存在しないものはやりようがない。そう考えると、僕の中のどこかにある種の静けさや内省的な要素があるのかもしれません。 自分自身、5年くらい前と今では明らかに違っていて、どんどん自分のことを表現できるようになってきました。プレッシャーを感じていないように見せるのが上手くなってきた部分もあれば、本来の自分でいることが楽なんだと気づいた部分もあります。その根本に、“静けさ”を持っているのかもな、とは感じます。 僕の中に、その役に適した何かしらがあってオファーをいただけていると考えると、自分も気づかない内面を見透かされていると思う反面、とても嬉しいことだとも感じます。