伝統技術、次世代へ 師弟で高倉ふき替え 奄美大島龍郷町
鹿児島県龍郷町浦の「とおしめ公園」で13日から、4本柱の高倉1棟のふき替えが行われている。職人らは奄美伝統の「逆ぶき」と呼ばれる手法を用いて補修作業に取り組む。指揮する大工の中村博志さん(60)=同町大勝=と、中村さんの下で修行を積む辺木奎さん(24)=同町瀬留=を取材した。 2019年に完成した同公園の高倉は4本柱3棟、8本柱1棟が設置されている。このうち、現在ふき替え中の高倉を含む3棟は、町民から寄贈されたもので国登録有形文化財となっている。 大工だった父から技術を習得した中村さん。20年以上、島内各地で高倉の補修作業を担っている。年間に請け負う件数は2~3件。今年は例年より多い6件ほどを予定している。個人からの依頼は少なく、ほとんどが自治体管理の高倉だ。 材料にはマカヤ(真茅)とススキが用いられ、量は合わせて800~1000束(1束の直径約30センチ)ほどを使用。奄美の高倉のかやぶき屋根は通常、長くても10年でふき替えが必要になるという。 本土とは手法が異なる「逆ぶき」は、1段目はマカヤの穂の部分を上向きに、2段目以降は下向きに積んでいき、表面にはススキを均等にのせる。中村さんは「奄美に伝わる伝統文化を継承していかなくては」と力を込めた。 現場では、中村さんの指示を受けて辺木さんが真剣な表情で作業を進めていた。県立奄美高校を卒業後、上京しビル設備関連の仕事に就いた。21歳で帰郷し、中村さんが営む工務店で勤務し4年目。「(高倉の補修技術は)若い後継者がいないので、次の世代につなぎたいと習い始めた」と熱意を語る。 高倉の補修作業はこれまで5回ほど経験。「出来上がったときの達成感が他では得られないものがある。まずは全工程を覚えて、自分でできるようになりたい」と意気込んだ。 頼もしい弟子の姿に、中村さんは「よくやっている」と笑顔。「伝統の技術を覚えて職人になり、本土のやり方も含めていろんなことを学んでほしい。高倉が長持ちする工夫を一緒に研究できたら」と期待した。補修期間は9月上旬ごろまでを予定している。