電撃譲渡!なぜビッグクラブの鹿島を日本製鉄は身売りしメルカリが買収したのか?
国内外で通算20個ものタイトルを獲得してきたJリーグを代表する常勝軍団・鹿島アントラーズが、フリーマーケットアプリ大手の株式会社メルカリ(本社・東京都港区)の完全子会社となることが30日、電撃的に決まった。 アントラーズを運営する株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シー(本社・茨城県鹿嶋市)の発行済み株式のうち72.5%を保有していた親会社の日本製鉄株式会社(本社・東京都千代田区)およびその関連会社から61.6%がメルカリへ譲渡される契約が結ばれた。 取得額は約16億円。同日に行われたJリーグの月例理事会で承認されたことを受けて、東京・文京区のJFAハウスで日本製鉄の津加宏執行役員、鹿島アントラーズ・エフ・シーの庄野洋代表取締役社長とともに緊急記者会見に臨んだメルカリの小泉文明取締役社長兼COOは、筆頭株主となった心境をこう語っている。 「社会のみなさまに受け入れられる会社になりたい、という思いでさまざまなスポーツを支援してきたなかで、鹿島アントラーズという日本を代表するクラブの経営に参画できることに会社一同、非常にワクワクしています」 今月23日に出そろった2018年度決算で、アントラーズの営業収益(売上)はクラブ史上で最高額となる73億3000万円を計上。4億2600万円の当期純利益、21億6600万円の純資産はともにJ1で2番目に多く、鹿島アントラーズ・エフ・シーの経営は極めて良好な状態にあった。 それでも、実質的な身売りをへてメルカリの傘下に入ったのはなぜなのか。答えを探っていくと、終戦直後の1947年に創部されたアントラーズのルーツ、住友金属蹴球同好会に行き着く。
1956年に住友金属工業蹴球団へ改称されたチームは、1973年に日本サッカーリーグ2部へ昇格。2年後には本拠地を大阪市から、鹿島製鐵所のある茨城県鹿島町へ移転。元ブラジル代表の神様ジーコを現役復帰させ、日本サッカー界で初めてとなる屋根付きの専用スタジアム、県立カシマサッカースタジアムを建設して、99.9999%不可能という状況からJリーグのオリジナル10に滑り込んだ。 2007シーズンから達成した前人未踏のリーグ戦3連覇を含めて、Jリーグの歴史に記されてきた栄光の跡はあらためて説明するまでもないだろう。 一方で親会社は2012年10月、住友金属工業が業界最大手の新日本製鐵(現日本製鉄)と合併したことで大きなターニングポイントを迎える。 かつては社会人野球やラグビーの新日鉄釜石などを所有するなど、新日本製鐵はアマチュアスポーツを積極的に後押ししてきた。しかし、住友金属工業と合併した時期は長引く鉄鋼不況のあおりを受けるかたちで、経営の合理化が進められた真っ只中にあった。 「プロのサッカーと、我々のような素材産業である鉄鋼業が社員の活性化を含めて、地域の方々と一緒にやるアマチュアスポーツは性格を異にしていると思ってきました。プロサッカーはあくまでもビジネスとして、あくまでも収益をどうしていくか、ということを第一に考えなければいけない」 記者会見に出席した日本製鉄の津加執行役員はこう語りながら、住友金属工業との合併以来、アントラーズの経営権を譲渡するタイミングを探ってきたことをほのめかしている。 「Jリーグを取り巻く環境が劇的に変わってきたなかで、アントラーズを将来にわたって世界と戦えるチームにするためにも、アントラーズの企業価値をさらに高めていくことは至上命題でした。その意味では素材産業である当社よりも、ファン層の拡大な売上高を伸ばす事業に精通している新しいパートナーを迎え入れて、新たな事業展開をはかって行くことが得策だと判断しました」 そして、お互いを高め合っていくビジネスパートナーとして白羽の矢を立てられたのが、2017シーズンからアントラーズのスポンサーとして名前を連ね、昨シーズンからはユニフォームの鎖骨部分にロゴを掲出しているメルカリだった。