意外と知らない、2040年「東京と大阪で3割が高齢者になる」という厳しい現実
この国の人口はどこまで減っていくのだろうか。今年1年間の出生数が70万人割れになるかもしれず、大きな話題となっている。 【写真】日本人は「絶滅」するのか…2030年に百貨店や銀行が消える「未来」 そんな衝撃的な現実を前にしてもなお、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。
「鉄道利用者2割減」というシナリオ
人口減少の影響にテレワークの普及に伴う引き下げ効果が加わったのでは、定期券収入はさらに落ち込む。 東京都市圏交通計画協議会が東京圏に茨城県の南部を加えたエリアを「東京都市圏」と位置付け、複数のシナリオを用いて2018年と比べた2040年の鉄道利用者数を推計している。 「2018年型社会」(コロナ禍前の人々の行動パターン)が今後もずっと続けば6.2%減にとどまるものの、テレワークが進んで就業者の通勤が減少した場合には21.4%減になるというのだ。 もちろん、鉄道各社は人口減少による人手不足や運賃収入が伸び悩むことを念頭に取り組みを強化している。目立つのは事業の効率化だ。 例えば、平日朝の通勤ピーク時間帯を避けて利用すれば料金を割り引く「オフピーク定期券」を導入する一方、通常の定期券料金を現行より値上げしようという動きがある。これはピーク時間の利用者が減れば、列車の運行本数や駅員も減らせることをにらんだものだ。 JR東日本は中長期的な運転士不足を想定して山手線の営業列車における自動運転の実証運転を開始した。技術面や営業面で鉄道会社同士の連携や協力も広がっている。 一方で、通勤の利便性向上や駅周辺の大規模開発といった古き鉄道ビジネスモデルにしがみつく事例も残っている。 都心から遠く離れた郊外駅の周辺ではいまだに大規模なマンション開発が見られるが、勤労世代が急増していた昭和時代にタイムスリップしたかのような錯覚さえ抱く。 沿線の魅力を高めることで他社の沿線エリアから人口を引き寄せ、乗客の目減りをカバーしようということだろうが、高齢化が進む人口減少社会においては沿線住民の争奪戦は長続きしない。 それどころか、東京都では地下鉄の延伸や羽田空港と都心部を結ぶ新規路線などいくつもの計画がなされている。栃木県宇都宮市ではLRT(次世代型路面電車システム)の開業を控えている。 「東京などでは輸送力がまだまだ足りない」という専門家の声もあるが、現時点での混雑緩和の要素が大きく、人口減少後の需要をどの程度見込んでいるのか心配である。見込み違いとなれば、維持コストが長期にわたって経営にのしかかる。