EC×生成AIで何が変わる？ EC「最大の弱点」をついに解決

　アリババのEC「タオバオ」のアプリにも同様の対話型生成AI「淘宝問問」が搭載され、こちらも消費行動を大きく変えるきっかけになるのではないかと注目されている。 　ECの最大の課題は、消費行動のすべてに関わることはできない点だ。消費者が購入する商品をある程度絞り込むまで、ECサービスは利用してもらえない。そのため、SNSやYouTube、テレビなどの広告とどう連結するかが常に課題になり続けてきた。意思決定モデルの「情報の収集」「代替案の評価」は広告などが担い、「意思決定」が行われてからECの出番となる。 　しかし、淘宝問問では、いきなり「ダイエットがしたい」と入力すると、ダイエットをする複数の手法を紹介してくれる。対話を重ねて深掘りすることも可能だ。これにより、ダイエットの手法を決めて、具体的な商品の紹介をしてもらうと、そこから商品の購入ができるようになっている。 　つまり、これまで広告が担っていた「情報収集」「代替案の評価」という部分をAIが行ってくれるようになる。これによりECアプリは、消費者がニーズを生む出発点から購入に至るすべてのプロセスで関われるようになり、利用者との接点が格段に広がる。 　さらに、EC×AIは、人間のより深いニーズを掘り起こす可能性もある。たとえば、「ダイエットがしたい」というニーズの背後には、真のニーズが隠されている。それは「異性にモテたい」かもしれないし「周囲からセルフコントロールのできる人だと見られたい」かもしれないし「健康への不安を解消したい」かもしれない。 　もし、AIとの対話の中で、自分でも気がついていない真のニーズを掘り起こすことができ、そこを出発点にして消費行動を開始すれば、消費に対する満足度は大幅に向上をすることになる。広告＋ECという消費行動よりも満足感のある消費体験を提供できる可能性もあるのだ。 　アリペイ、タオバオともに、「まずは対話型生成AIを実装してみた」という段階であり、AIが生活や消費の行動をどう変えていくのか明らかになるのはこれからだ。しかし、入れてみただけでも体験は大きく変わる。多くの人が検索エンジンよりもAIに聞くことを好むようになり「ググる」という言葉が使われなくなりつつあるのと同様に、AIがない生活系アプリは考えられなくなる日がやってくるのは意外に早いかもしれない。