【社会人野球】25年から活動再開する日産自動車が求めた新たな人材の「基準」
一変する西関東地区の空気
日産自動車は25年シーズンから参戦していくわけだが、報道陣から具体的な目標を問われると、伊藤監督は「都市対抗出場です」と即答した。西関東地区はENEOS、東芝、三菱重工Eastと社会人トップレベルのチームがいる。「今年は三菱重工Eastさんが第1代表で、第2代表のENEOSさん、そして(予選敗退の)東芝さんと全国屈指の強豪がいる中で、日産のフレッシュなチームが挑んでいく構図になりますが、全力でぶち当たっていく」。24年までは西関東地区の代表決定リーグ戦で、出場2枠を3チームで争う展開が続いた。25年も出場枠の変更がなければ、4チームで2枠と、競争はさらに激化するはずだった。 しかし、状況は変わった。今夏の都市対抗で三菱重工Eastが初制覇。黒獅子旗を奪取した社会人王者は、次年度は予選免除で「推薦出場」の権利が得られる。つまり、来年の西関東予選で三菱重工Eastは不在である。 「3チームを相手しないといけないところが、2チームに。私が勝手に思っているだけかもしれないですけど、(日産自動車に)風が吹いているんじゃないかと、勝手に思っています(苦笑)」 伊藤監督の横で聞いていた四之宮コーチは「三菱重工Eastさんが優勝された都市対抗決勝を東京ドームで見させていただきましたが、あらためて、西関東を勝ち上がる難しさを感じています。ENEOSさんは相変わらず、ENEOSさんらしい野球をされていますし、(今年は都市対抗を逃した)東芝さんも、若手がどんどん成長している。枠は一つ変わったかもしれませんが、来年、そこに自分たちが立ち向かっていける、予選を味わえることにワクワクしています」と、背筋を伸ばした。 伊藤監督にあらためて、質問をぶつけた。「目指すは、西関東の第何代表ですか?」と。 「どちらでも良いですが(苦笑)、第1代表を狙って頑張りたい。簡単に『惜しかったな……』とかは言いたくない。勝ち切りたい」 日産自動車が参戦すれば、明らかに西関東地区の空気は一変する。切磋琢磨していく中で、さらなるレベルアップが期待できる。「選手はものすごく楽しみです」。伊藤監督がその目で見て、プレーだけでなく、人としても惚れ込んだ人材である。かつて日産自動車の伝統として根付いていた熱があり、圧があるチームへと、どう仕上げてくるのか。熱血指揮官が率いる活動再開元年から目が離せない。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール