自らおむつ履き排せつ実験、「おむつを開けずに中が見たい」介護職員の声を実現した臭いセンサー 原点は中学時代の介護経験、提携施設で集めた5千件のデータ
介護の現場で食事、入浴と並んで大変な仕事とされるのが排せつの介助だ。おむつの交換が遅くなれば衣服が汚れる一方、夜中も含めて巡回する介護士の負担は大きい。「おむつを開けずに中が見たい」。介護職員の切実な思いを解決する排せつセンサー「ヘルプパッド」を「aba」(アバ、千葉県船橋市)が開発した。 最高経営責任者(CEO)の宇井吉美さんは「介護にはやりがいがある。でも、現場は忙し過ぎてそう感じることができない。排せつセンサーで、やりがいを感じられる余裕をつくりたい」と語る。(共同通信=早田栄介) 【※この記事は、記者が音声でも解説しています。共同通信Podcast「きくリポ」を各種ポッドキャストアプリで検索してください→「おむつを開けずに中を…」介護職員の声を実現したスタートアップ、原点は中学時代の介護体験】 ▽「介護する側を支えないと」 ヘルプパッドの仕組みはシンプルだ。においを感知するセンサーを備えたシートをベッドの上に敷き、排せつがあればパソコンやタブレット端末などに表示する。 宇井さんが介護支援を考えるようになったのは、中学時代の経験が影響している。うつ病になった祖母を自宅で介護した。祖母は自分で食事をしたり、通院したりできたが、日々のケアに家族は疲弊した。そして、付きっきりの世話が必要な身体介護を担っている人たちの負担はどれだけ大きいのだろうかと考えるようになった。
「介護を受ける人も大変だけど、介護する側の人を支えないとつぶれちゃうんじゃないか。介護者の支援をしよう」と決めた。 ▽介護士の声を反映した二つのこだわり 科学に興味があったこともあり、ロボット研究で知られる千葉工業大学(千葉県習志野市)の未来ロボティクス学科に入学した。テクノロジーの力を使って介護者を助けたい。その思いは強かったが、どんな形で具体化するのかはまだ見えていなかった。現場を重視する教授の勧めを受け、実習で特別養護老人ホームに通うようになった。そこで出会った一人の職員の言葉が心に残った。「おむつを開けずに中が見たい」。 介護施設の職員は、1日に何度も入所者のおむつを開いて排せつを確認する。排せつがなければ「起こしてごめんなさい」、外に漏れていると「遅くなってごめんなさい」。繰り返し申し訳なさを感じる。職員にとっても、夜中も含めて定時で巡回することの身体的な負担は大きい。