「まるで金太郎飴」「金持ちの外国人客ばかり意識してる」…。再開発で東京に「貧しい日本人」を排除する商業施設が増える“残念な現実”
それは、再開発で仕切りに言われる「多様性」に確かに貢献している。その街にないもの・足りないものを補完してくれるからだ。「その街にないものが生まれる再開発」こそが、進むべきだと感じる。 実はこの点でいえば、東京にもそうした再開発事例がないわけではない。例えば、今年開業した「SHIBUYA SAKURA STAGE」。この低層階には、松屋やマック、カルディ等々、比較的、庶民派な店が揃っている。渋谷の再開発で生まれてこなかったものが生まれているようにも感じる(ちなみに渋谷に足りないとされていた大型書店も入っている)。
東京・大阪に限らず、こうした再開発が増えれば、おのずと街の「多様性」は生まれてくるだろう。 ■再開発の「違う道」を探して 個々の再開発事例は開発のスキームや規模感も異なるから、それを一様に比べることに無理があるのでは、という意見が出てきそうだ。たしかに、都市論関係者の間での話ならばその違いを見るのも重要だろう。 しかし、あくまでもできてしまった施設は、その街に暮らす人やそこに訪れる人からすれば、同じ建物でしかない。開発主体がどうだとか、なんだとか、関係ないのである。
今後も、東京ではさまざまな再開発が進んでいく。ただ、いくつかの事例を見ても、やはり「金太郎飴」感から脱していないような、「高層ビル」「富裕層向け」「インバウンド向け」の施設が目立つ。 例えば、東京駅前にできる予定の「トーチタワー」。まだ完成していないから断罪することはできないが、高層階にホテル(しかも、ウルトララグジュアリーホテルらしい)、低層階に高級そうなショップ、そして適度な緑地……というお馴染みの構成だ。この時点で、多くの庶民である市民には、「名前を覚える必要のない施設」と言って良さそうである。
こうした再開発が街にどのような影響を及ぼすのか、それはまだ誰にもわからない。でも、その街の「多様性」を本当に考えるならば、違う道もあることに気が付くときがそろそろ来ているのかもしれない。
谷頭 和希 :チェーンストア研究家・ライター