「まるで金太郎飴」「金持ちの外国人客ばかり意識してる」…。再開発で東京に「貧しい日本人」を排除する商業施設が増える“残念な現実”
■緑が「あればいい」わけじゃない ちなみにそうした「多様性」の象徴だろうか、そこにはGRAND GREENと同じように存分に緑がある。森ビルは六本木ヒルズからの再開発のたびに、それぞれの施設の緑化面積を増やしている。六本木ヒルズの緑化面積が約1万9000㎡なのに対し、麻布台ヒルズの緑化面積は約2万4000㎡である。 ただ、そこがGRAND GREEN OSAKAのような開放性のある緑なのかというと、疑問がついてしまう。芝生はあるにはあるが、養生中の場所も多く、寝っ転がっている人は見かけられない。また、座る場所はいすで細かく指定されていて、視界に入る景色も高層ビルばかりでどこか圧迫感がある……。
書籍『都市の緑は誰のものか』(ヘウレーカ・2024年)の中で、南山大学総合政策学部准教授の太田和彦は、自然と人間の関係を「機能的価値」だけで捉えることに警鐘を鳴らす。「機能的価値」とは、植物があることによってCO2がこれだけ減る……といった数字で表せるような自然の価値のことだ。ただ、考えればわかるように、私たちにとって自然とはそうした数字で表せるだけでなく、もっと情緒的な価値を持っている。「ただあればいい」ものではない。
緑を建物に取り入れる際には、そうした人間の情緒的な側面までを踏まえてそこがデザインされる必要があるのだ。その意味でも、正直、麻布台ヒルズにある緑は「あればいいんでしょ」といった感じを受けてしまうのは筆者だけだろうか。 最近の東京の再開発のもう一つのテーマが「自然」かもしれない。実際、そこには多くの自然があったりする。けれど、それらがどこか堅苦しい感じを持っているのは、その自然が機能的価値のためだけに植えられている例も多いからではないか。その点でも、東京の再開発の「金太郎飴」感が否めないのだ。
■「街にないもの」が生まれる再開発を GRAND GREEN OSAKAがその点で興味深いと思ったのは、大阪駅前のあの場所で、いわゆる他の再開発ビルと同じようにならずに、広大なスペースを生かすような再開発を行っていることだ。金太郎飴感から脱している。 もちろん、「専門家」の目からすれば、東京にあるさまざまな再開発ビルもそれぞれ違いがあるのだろうが、おそらく一般人の目からはわからない。そうした小さな違いではなく、見た目に「ぜんぜん違うものができたなあ」と思う再開発事例が誕生したことが興味深いのだ。