春日部共栄’19センバツ/中 打撃 不振脱出糸口示す /埼玉
<第91回選抜高校野球> 夜を迎えて、照明がともり始めた春日部共栄のグラウンド。打撃練習をしていた中堅手の黒川渓選手(2年)が柳川淳打撃コーチ(27)の元に駆け寄った。 「どうですか?」。打つ際に体が前へ突っ込んでいないか、右脚を軸にターンできているか。打撃面の課題について柳川コーチに指導を仰ぎ、また練習に戻るのが習慣だ。 柳川コーチは「適時打を単発で終わらせないことをチームで心がけてきた。黒川が出塁すると得点率が上がるキーマン。打線を引っ張ってほしい」と期待する。 先頭打者を任され、チームで「切り込み隊長」と呼ばれる黒川選手だが、肩の不調なども影響し昨秋の県大会以降の公式戦打率は2割7分と振るわない。苦しい打席が続く中、柳川コーチの存在が支えだ。 準優勝した昨秋の関東大会では、ほぼ毎試合後、柳川コーチに付き添ってもらい、夜に宿舎の駐車場で素振りを繰り返した。柳川コーチは「1番を打つ責任を感じていたはず」と推し量る。 黒川選手は「どの打席でも、自分が出塁しなくてはいけないと常に意識する。柳川コーチには気軽に聞け、精神的に安心できる」と話す。 ◇ コーチ陣から「チャンスに強く粘っこい打者」と評される二塁手の平岡大典(たいこう)選手(2年)も柳川コーチを慕う一人だ。 関東大会後、打率向上に悩んだとき、選手寮で生活を共にする柳川コーチの部屋を訪ねた。「アウトコースが弱い」。そう指摘され、打ち方などを約30分かけて丁寧に教えてくれた。 平岡選手は「打てなくなったとき、柳川コーチはヒントをくれる。それが解決の糸口になり、とても頼りになる」と信頼を寄せる。 柳川コーチの部屋には日ごろから、レギュラーを中心に指導を求める選手たちが訪れる。柳川コーチは「選手が感じていることと自分が思っていることのずれは必ずある。選手の意見を聞き、納得させることが大事」と説明する。 同校野球部OBの柳川コーチは2013年にコーチに就いた。自身に甲子園出場の経験はなく、昨夏の北埼玉大会で初戦敗退してから「強い共栄を取り戻す」という意識を人一倍持ってきた。今の選手たちは入学時から指導し、センバツ出場を誰よりも喜ぶ。 柳川コーチは「開幕までに打撃の確率を上げる。甲子園は良い投手しかいない。ヒットエンドランなど走塁も強化し、チャンスを広げられるチームにする」と、センバツの大舞台に向けて気を引き締めた。【畠山嵩】