自転車の前カゴに家族? コペンハーゲンで考えたこれからの都市交通
【&M連載】小川フミオのモーターカー
自動車のカーボンニュートラル化が叫ばれてずいぶん経つが、利便性とか考えるとなかなかむずかしいのも事実。でも少なくとも都市内交通だったら? それを考えさせてくれるのが、先日出かけたデンマーク・コペンハーゲンだ。 【画像】もっと写真を見る(7枚)
ママチャリにカーゴバイク 自転車だらけの街
コペンハーゲンが市をあげて自転車の普及/自動車の削減に取り組んでいるのは、私も以前から知っていた。なので、今回は実地を見るいい機会だった。はたして、ホント、自転車だらけ。 おもしろいと私が思うのは、自転車のバリエーションが豊富なこと。自動車に乗用車やタクシーやトラックがあるように、コペンハーゲンのひとたちは用途別に選んでいる。私の印象では、欧州の各都市よりはるかに多様性に富んでいる。 スポーツサイクルもあれば、車輪径の大きな、日本で言うママチャリ(シティサイクル)も多い。同時によく見かけるのはカーゴバイク。前に荷物、どころか複数のひとを乗せて走る。それにホイールベースをうんと伸ばして、たくさんの荷物を積めるようにした自転車も、というぐあい。 とくにユニークなのはカーゴバイクだ。お母さんが子どもを何人も乗せて走っている。私が見ていると、同じ街角である時間帯に、同じ方向に走っているカーゴバイクが多かった。子どもを施設にあずけにいくのだろう。 お母さんと子どもを乗せたお父さんも多いし、年取った両親(と思う)が娘が操るカーゴバイクに並んで座り、うれしそうに話しているのも見かけた。ほほえましい光景だ。 デンマーク大使館(本国)がリンクをはっている「Cycling Embassy Of Denmark」なるサイトによると、コペンハーゲンの2人の子供がいる家庭の26パーセントがカーゴバイクを所有しているそうだ。 今回、私もカーゴバイクを体験したいと思い、通りがかった自転車レンタル屋に立ち寄ってみたら、すべて出払っていた。残念。まあ、ひとりで乗ってもしようがない。
地の利とともに、自動車に乗る理由がなくなる施策
コペンハーゲンにおける自転車の普及率は、6歳以上の住人10人に対して9台と多い(デンマーク観光公式サイト VisitDenmark)。振り返って私の家をみると、家族3人に対して自転車は2台あるが、年間稼働時間は30分程度と極端に少ない。デンマークでは、ひとりあたり平均して1日1.4キロも自転車に乗るそうだ。 日本では、自転車に乗るのがけっこうしんどい。東京も”坂の街”である。電動自転車が多いのはそこに理由がある。コペンハーゲンは平地で、自転車に適しているという地の利もある。 上記のサイトで数字を拾うと、かの国では、10キロ以内なら自転車を使うひとが21パーセントで、あらゆるトリップ(高速を使わなくても行ける距離ってことだろうか)を自転車でというひとの割合も15パーセントにのぼるとのこと。 私が話を聞いた20代のデンマーク人女性は、「もちろん通勤は自転車で、雨だろうと冬だろうと乗る。自動車は高いし、自転車があれば、自動車に乗る意味はあまり感じられない」と言っていた。 コペンハーゲンを見ても、自転車専用道は幅員が1.7mから2.2mと余裕があるし、街中に張り巡らされている。サイクル・スーパーハイウェイと呼ばれる、自転車のための道も整備が進んでいる。 自動車や歩行者などと極力接触しないような配慮がされており、おもしろいのは、自転車専用信号がクルマの信号よりすこし早めに緑に変わることだ。瞬発力で劣る自転車のための配慮である。 駅前には大きな駐輪場があるし、遠出しようというひとなら、電車に自転車を積み込める。ドイツでもそうだった。自動車に乗る理由を見いだしにくくする施策ともいえる。 コペンハーゲンでは自動車1台に対して、自転車の保有台数は5台なんだそうだ。デンマーク大使館のサイトには、「自転車が平均して年間2万トンのCO2を削減する」とある。デンマーク政府は、自転車利用を推進するいっぽうで、自動車に高額の税金を課すなど脱・自動車政策をとっている。