エーゲ海の火山島で最悪の想定を更新する大爆発がありうると判明、ケタ違いの規模か
風光明媚なギリシャのサントリーニ島、1300年前の噴火はトンガ噴火級だった
真っ青なエーゲ海と、それを見下ろすように崖の上に立ち並ぶ白と青の家々。ギリシャのサントリーニ島は、天国のような美しい景観で世界的に知られている。しかし、3月25日付けで学術誌「Nature Geoscience」に発表された論文によれば、この島は今までの想定よりも大きな爆発的噴火を引き起こす可能性を秘めていることが明らかになった。 ギャラリー:この世の果て? 地獄のような絶景写真12点 サントリーニ島には驚くほど激しい誕生の歴史がある。三日月のような島の形は、はるか昔、巨大な火山噴火によって島の中央がえぐり取られてできたものだ。その火山は、噴火するとすぐに新たなマグマが補給されて再び噴火する周期を何度も繰り返してきた。 なかでも、紀元前1600年頃の噴火は過去1万年間で最大級の規模だったことで広く知られ、海洋交易で栄えたミノア文明が衰退するきっかけになったという説もある。 島は現在、この噴火周期の中間のどこかにいる。そして今、火山学者が最も懸念しているのが、三日月に囲まれた湾の中央部にある小さな「カメニ火山」だ。山の大部分は海の中に隠れているが、2つの頂上がわずかに海上に突き出ており、それぞれパレア・カメニ島とネア・カメニ島と呼ばれている。 西暦726年、カメニ山が大規模な爆発的噴火を起こした。火成岩の分析に基づき、この規模の噴火がカメニ山噴火で起こりうる最悪のシナリオだろうと考えられていた。 ところが、今回の論文で、実際の噴火の規模はこれまでの推定よりさらに1桁から2桁も大きかったことが明らかになった。 論文の著者らは、726年の噴火によって少なくとも3.1立方キロメートルの溶岩や火山灰、超高温の岩石が噴出したと推定している。これは、2022年に太平洋で発生した巨大なフンガトンガ・フンガハアパイ海底火山の噴火に匹敵する。「今日このような噴火が起これば、甚大な影響を及ぼすでしょう」と、論文の筆頭著者でドイツ、ハンブルク大学の地球物理学者ヨナス・プライネ氏は言う。 現在、サントリーニ島には1万5000人が住み、年間200万人の観光客が訪れている。その島で「中規模から大規模な噴火が起こる可能性が高まったということです」と、英オックスフォード大学の火山学者であるデビッド・パイル氏は言う。氏は、今回の研究には参加していない。 「だからと言って、エーゲ海の人々が今すぐパニックを起こす必要はありません」と、プライネ氏は付け加える。近い将来サントリーニ島で大規模な噴火が起こるリスクは低く、その兆候も見られない。今回の研究は、サントリーニ島とその噴火のリスクをよりよく理解し、将来の危険から住民たちを保護するために役立つ。 「海底火山の調査には莫大な費用が掛かりますが、その価値はあります。海底火山に関連する危険は数多くありますから」と氏は話す。