「欲しかったなぁ」EICMAで話題のホンダV型3気筒の前に、V型5気筒エンジン車の噂があった【1400cc 200psの弩級GT】
検証2:優位性。V型5気筒に市販車としてのメリットはあるか?
────────── じつはV型6気筒がエンジンとして一番まっとう、だが… ────────── 「V型6気筒は何がまっとうかというと、振動の面でまっとうなのです。ただ、V型5気筒でも偶力のバランスが取れているとホンダが言っているのなら、話は変わってきます。」 「RCVの構造を分析してみますと、要するに6気筒のアンバランス分を5気筒の真ん中の気筒に背負わせることで、カップリング振動を消失しているということです。つまり、真ん中の1気筒で2気筒分の仕事をしていて、6気筒と同じようにカップリング振動が消えるということです。」 「発想は単純にMVXの3気筒です。これは真ん中の1気筒に2気筒分の重さがあって1次振動を打ち消すという設計です。結果的には上手くいかなかったエンジンですが、それをコンピュータを使って研究して、4サイクルに適応したらV型5気筒になったというところではないでしょうか。」 「V型5気筒に話を戻しますと、おそらく1次振動は75.5度というアングルでないと消すことができないのでしょう。これはコンピュータでないと計算はできませんが、数式はありますので、そこから弾き出したのだと思われます。そして、振動の面でV型6気筒と互角として、さらには、実機で乗った時の差もあるのではないでしょうか。」 「V型6気筒は”根性なし”なんです。V型6気筒は比較的等間隔爆発になるので、モーターのような回転になります。V型5気筒はかなりの不等間隔爆発になると思われますが、その方がライダーとしてはアクセレーションに対してのツキの反応が高く感じることができるでしょう。」 「つまり、不等間隔爆発はオートバイという乗り物ととても相性がいいのです。等間隔爆発でスルスルと行ってしまうと、理論上はいいのですが、ライダー的にはあまり面白くないフィーリングに感じられることが多いのです。」 「V型4気筒がこのV型5気筒のメリットを補うことができるかというと無理です。4気筒はどうしてもカップリング振動を消すことが、できないからです。つまり、V4の同爆的なフィーリングで振動がないのがV型5気筒と、単純に機械的メリットを語ることはできます。」 「さらに直列4気筒は等間隔爆発の上に、カップリング振動が残るので、V型5気筒には完敗です。カップリング振動とはとても高周波の振動で、どうしても細かくハンドルとかにシビれが残ります。ハンドルバーエンドに重りがついていたりするのはこの対策なのです。」 「エンジンはパワーを出そうとすると、単気筒より、2気筒、3気筒と、ピストンスピードの上限があるので1気筒あたりの排気量を小さくして、より多く回転するように多気筒化していきます。これがどこまで行けばいいのか、昔はずっと並列エンジンだったので、4気筒あたりで落ち着いた。」 「今度はそれがVになってという進化の流れの中で、直列4気筒はその過程にあった、1つの形態にすぎない。だからエンジンの進化の流れの中で新たにV型5気筒が出てきても決しておかしくはないでしょう。」 【1次/2次振動抑制のメカニズム】重量的な不釣り合いをなくすため、リヤ1気筒に2気筒分の重さを与えたMVXのエンジンは90度V型4気筒にあたる。4気筒を3気筒に置き換えた構造なので、回転方向の1次振動が消える。同様に6気筒を5気筒に置き換えた、V型5気筒は1次振動とカップリング振動(2次振動)を消すことができる。 ────────── 元朝霞研究所エンジニアの答え=市販化はある ────────── T氏解説の通り、V型5気筒の優位性はあるという結論で異論はないだろう。コスト的には直列4気筒より割高となるが、V4と大差はないそうだ。追加1気筒分のピストンやバルブ、エキゾーストパイプ等の価格は原価で計算すると、2万円程度にすぎないという。 よって、動弁系パーツ数の勝敗はつけなかった。また、パワーに直結する排気干渉技術は、等間隔爆発のエンジンに関しては技術的課題はない。不等間隔爆発の場合は、高度な技術的蓄積が必要となるが、ホンダにはV型4気筒のノウハウがあるので、問題なくV型5気筒に移行することが可能だ。