低金利の「前提」崩壊? 日銀の利上げ転換シナリオは
将来不安が増幅し、節約意識強める?
他方、マイナスの所得効果は案外強く効いている可能性があります。それを象徴したのは、2016年のマイナス金利導入時や年金2000万円問題の過熱です。国民の声として「金利が低くて資産形成ができない」という不安・批判が上がったことは、利子所得が見込めないことが将来不安を増幅し、それが節約意識を強めている可能性を浮き彫りにしました。利子所得が豊富に見込めた時代、人々は貯蓄に励んだ一方、その利子所得が後ろ盾となり、将来不安が抑制されていた印象ですが、現在の日本はそうした状況にありません。 このように代替効果が薄く、負の所得効果が作用する状況下では「プラスの所得効果>マイナスの代替効果」となっている可能性があり、そうであれば金利引き下げは逆効果になってしまいます。 金融緩和は景気にプラスの影響を与えると日銀が主張してきたこれまでの経緯を踏まえると、近い将来、利上げ方向に傾くとは考えにくいのは事実です。あまりにも急進的な論理変更だからです。ただし、より長期でみた場合、政権(首相)交代や日銀総裁任期満了(2023年)をきっかけに、そうした流れが変わってくる可能性はあるでしょう。
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